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2016-11-07 00:00
不用意なまま一気に核兵器を禁止するのは危険
加藤 成一
元弁護士
軍縮問題を扱う国連総会第一委員会は、10月27日「核兵器禁止条約」の交渉を2017年に開始するとした決議案を123ヵ国の賛成多数で採択した。この決議案は、オーストリアやメキシコの主導で55ヵ国以上によって共同提案され、核兵器を法的に禁止する拘束力のある文書の制定交渉を行うというものである。しかし、この決議案には、米露英仏中などの核保有国は、いずれも反対または棄権している。
日本政府は、米露などの核保有国が加わらない決議案には実効性がなく、核保有国と非核保有国との亀裂を深めるだけであるとして、米露などの核保有国が加わった形で着実に核軍縮を進める立場から、決議案に反対した。そして、日本が国連総会第一委員会に提出した核兵器廃絶決議案「核兵器の全面的廃絶に向けた新たな決意のもとでの共同行動」は、アメリカを含む約110ヵ国が共同提案国となり、167ヵ国の賛成を得て、10月27日に採択された。これは「核兵器のない世界」の実現に向けた現実的な道筋を示すもの、と言えよう。
「核兵器禁止条約」に反対した日本政府の対応については、「唯一の核被爆国」としての立場からの批判がある。しかし、日本は「唯一の核被爆国」であり、核を保有していないが、アメリカの核抑止力に国の安全と国民の生命を全面的に依存している。核兵器の禁止は、このアメリカの核抑止力を消滅させるものであり、日本の安全保障に重大に影響を与える。アメリカの核の傘によって守られている韓国やオーストラリア、そしてドイツなどNATO諸国が決議案に反対したのも、そのためである。
仮に、「核兵器禁止条約」が成立し、米露などの核保有国がすべての核を放棄した場合に、国際法を遵守しない一部の国が、核を放棄せず、または新たに核を保有したとすれば、このような「無法国家」は核を独占することになり、核による脅迫や恫喝によって全世界を支配する危険性がある。そうだとすれば、重要なことは、不用意なまま一気に核兵器を禁止することではなく、一方で核軍縮を着実に進めるとともに、他方で日本が提出し、167ヵ国の賛成を得た「核兵器廃絶決議案」の実行や、国際世論の力で、核兵器を事実上「使えない兵器」に変えることである。日本政府としては、引き続き核保有国の協力を得つつ、着実に「核軍縮」を進め、「核廃絶」に向けた外交努力を重ねることであろう。
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