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2016-12-12 00:00
(連載1)アジアの乱気流と日米の課題
鍋嶋 敬三
評論家
米国のドナルド・トランプ新政権が2017年1月20日発足する。大統領選挙で「米国第一主義」を掲げたトランプ氏の予想外の勝利は世界に衝撃を与えた。アジアは韓国の大統領弾劾案可決など乱気流に翻弄されている。政局混迷の韓国が対峙する北朝鮮の核・ミサイルの脅威に適切に対処できるか、不安が高まる。東アジア安定のカギとなるはずだった日中韓首脳会議は延期に追い込まれた。台湾の蔡英文総統がトランプ次期大統領と電話会談、台湾海峡に微妙な空気が漂う。南シナ海を舞台にした中国と紛争当事国との緊張は一時的に収まっているが、中国の一方的な領土拡張、軍事化の動きが止まったわけではない。北に目を転じると、ロシアが北方領土にミサイルを配備、軍備強化を露わにしてきた。これらの動きはPAX AMERICANA(米国による平和)が終わり、第二次世界大戦後の国際秩序の動揺が目に見える形で現れてきたということである。
トランプ次期大統領は米国による安全保障関与の削減、保護主義的政策を主張して当選した。日米、日韓など同盟関係や北大西洋条約機構(NATO)など多国間の安全保障体制にどのような影響を与えるのか、不透明である。政権発足当日には環太平洋連携協定(TPP)からの離脱宣言を予告、二国間貿易交渉にシフトする姿勢を明らかにしている。現段階では政権を構成するホワイトハウスや閣僚人事などがすべて決まっていないため、安全保障、国際経済政策など柱となる戦略の行方はまだ見えない。それでも国家安全保障担当の大統領補佐官や国防長官などに退役将軍を起用、財務長官や商務長官など重要経済閣僚には大企業元幹部や投資家を指名した。
軍人の多用についてアメリカン大学のG.アダムス名誉教授は「軍事というレンズを通してフィルターにかけられると、正当な国政運営が必要とする政策決定にバランスを欠くことになる」と文民統制の上から批判した(ニューヨーク・タイムズ紙)。同紙はまた、国務長官の有力候補として急浮上した石油大手のエクソン・モービル社最高経営責任者(CEO)のR.W.ティラーソン氏がロシアと関係が深く、4年前にロシア政府から友好勲章を授与されたと伝えた。エクソン社はまた中東カタールの国営石油会社とも深い関係があるという。大企業経営者の閣僚登用は米国では珍しくないものの、次期大統領自身が政治経験がない不動産王のビジネスマンだけに、外交や金融政策、通商交渉で米国の利害と相反する懸念は否定できない。
アジアの国際情勢の軸は米中関係である。トランプ氏は慣例を破って台湾の総統と電話会談を行い、「一つの中国」政策の堅持を求める中国にショックを与えた。一方で、中国駐在の米国大使に習近平主席の古くからの知己であるアイオワ州知事を指名するというバランス感覚も発揮した。米国には台湾防衛のための台湾関係法があり、台湾問題が米中関係を左右するカギであることに変わりはない。トランプ氏が米中国交正常化以来の米国の対中政策を踏み越える兆候は今の段階で見られないものの、中国を厳しい目で見ていることは間違いない。同氏はツイッターで「南シナ海の真ん中に巨大な軍事施設を建設していいかと尋ねたか!」「通貨の切り下げや、中国向け米製品に重い関税を課していいかと尋ねたか」とつぶやいて中国を強く牽制した。米中それぞれの出方によっては摩擦が強まる素地は十分にある。(つづく)
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