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2016-12-23 00:00
翁長知事は「上告棄却」の最高裁判決を尊重せよ
加藤 成一
元弁護士
米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設をめぐり、翁長沖縄県知事が「埋め立て承認」取り消しの撤回に応じないのは違法だとして、国が県を相手に提起した不作為の違法確認行政訴訟で、最高裁第二小法廷は、12月20日裁判官全員一致で「翁長知事による承認取り消し及びその撤回に応じないのは違法だ」とした、原審福岡高裁那覇支部の判決を支持し、県側の上告を棄却し、確定した。上告棄却の主たる理由は、(1)普天間に比べて辺野古は、施設規模が縮小されること、(2)移設すれば、航空機が住宅地の上空を飛行するのを回避できること、(3)環境保全への配慮についても特段不合理な点が窺えないこと、などの諸点から、「埋め立てを承認した仲井真前知事の判断に違法な点は認められない」というものである。
思うに、普天間基地の面積は480ヘクタール(東京ドームの102倍)であるが、辺野古基地の面積は完成後でも205ヘクタールであり、移設によって基地面積は半分以下に縮小されること、滑走路は海上に設置されるから住宅地上空の飛行が回避されること、環境保全についても、埋め立て承認審査に関わった課長級の県職員は「環境に配慮し、埋め立て承認の基準に適合している」と判断した旨を、翁長知事が設置した「有識者委員会」に説明していること、などの諸点を考えれば、最高裁の判断は合理的であり、首肯できる。
今回の最高裁判決の重要な点は、前知事による埋め立て承認を取り消す目的で翁長知事が設置した「有識者委員会」なるものの「意見」の妥当性や公正中立性が、明確に否定されたことである。翁長知事による承認取り消しの行政処分そのものが、もともと法律的には「無理筋」であったと言えよう。翁長知事は、各種選挙結果による「沖縄の民意」を盛んに強調するが、同知事には「沖縄の民意は国の安全保障や法律に優先する」との傲慢さが窺える。沖縄を含む1億2700万国民の生命と国の存立を全うするための安全保障は、一地方の「民意」に優先すると解すべきである。尖閣諸島の防衛を考えたとき、沖縄の地政学的重要性を無視することはできない。
翁長知事側は、たとえ今回最高裁で敗訴し判決が確定しても、今後「承認撤回」など、移設阻止のための新たな手段を講じることが予想される。「承認撤回」は、「承認取消」のように承認審査の「瑕疵」を要件とせず、適法な承認後に生じた「撤回事由」により、国と県の公益を比較して、県の公益が大きい場合は可能とされるものだからである(参考判例1988年6月17日最高裁第二小法廷判決)。「撤回事由」としては、環境保全問題や承認後における各種選挙での移設反対派の勝利、などの主張が想定される。ただし、今回の最高裁判決はそれらの主張をも相当程度織り込んでいると思料されるから、今後、裁判で「承認撤回」が認められる確率は極めて小さい。翁長知事には、今回の最高裁判決を尊重し、辺野古移設による普天間基地撤去を実現して、沖縄の基地負担軽減を図ることを期待したい。
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