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2017-01-08 00:00
(連載1)反グローバリゼーションは「ポスト真実」である
角田 勝彦
団体役員、元大使
トランプ勝利をきっかけに、反グローバリゼーションの動きが盛んになっている。これは、一つには、私が「世界一体化」と訳するグローバリゼーションにより推進された「規制無き利潤追求と貧富の格差拡大」のような強欲資本主義への非難であり、もう一つには、世界一体化が実現した「大量の難民・移民の流入」に対する社会(とくに低賃金労働との競争を強いられる階層)の悲鳴である。競争力に欠ける国内産業(日本農業など)の外国産品輸入増に対する反発という「世界一体化」以前からの動きもある。
英国国民投票でのEU脱退派の勝利や「アメリカ第一」というトランプのスローガンが、理性的な民主党の国際協調路線維持の訴えよりも米国民の心を捉えたことで、「ポスト真実」、すなわち真実かどうかより、同感させられるかどうかが大切、という言葉が生まれた。国民に「そうだ、そうだ」と言わせる者が勝つことである。
反グローバリゼーションは、典型的な「ポスト真実」である。主張する論者は、そもそもグローバリゼーションを勝手に定義し、欠陥をあげつらっている。私も強欲資本主義への批判において他に劣る者ではないが、その罪をグローバリゼーションに着せるのには無理がある。飽くなき利潤追求と貧富の格差拡大は、資本主義とともに存在してきたからである。例えば米国では大企業の独占が問題になり、1890年のシャーマン法など反トラスト法が制定されている。スタンダードオイルは1911年に34の新会社に分割された。IT関係ではマイクロソフトとインテルを主対象に欧米で多くの訴訟と制裁が行われている。ナショナリズム(国家主義ないし愛国主義)昂揚を反グローバリゼーションの主因とする見方も多いが、ナショナリズムに対比すべきはインターナショナリズム(国際主義)であって、グローバリゼーションではない。
グローバリゼーションは、これまでの「国際化」現象と違い、1990年代より生じている新たな現象である。1996年のリヨン・サミットで、主催国フランスは、この名(フランス語でムンディアリサシオン)で新たな世界的潮流を指摘したのである。背景にはソ連圏崩壊などによる世界経済の一体化とIT(情報技術)革命の開始がある。「世界一対化」には多くの側面がある。 第一は、多国籍企業の激しい利潤獲得意欲に促された商品・サービス・資本・労働・情報の国境を越えた交流及び国際競争と相互作用の激増である。これは供給過剰と強欲資本主義を生んだ。第二は、WTOなど国際機関での合意や商品自体(例えばウインドウズ)の力による世界ルールと世界標準の設定である。これまでそのスピードは不十分だった。第三は、国境の希薄化や経済面などでの「内政干渉」の通常化である。(つづく)
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