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2007-04-09 00:00
理想の選挙制度
大藏雄之助
評論家
選挙制度は租税制度と同様に最適というものがない。小選挙区制は政局の安定には好都合だが、死に票が多く、最近のように投票率が低ければ、有権者の20パーセント以下の支持で議員が選ばれてしまう。そこで、過半数の得票者がいない場合は、上位2人の候補者で決選投票を行って、多数を得た方を当選とするように決めている国も少なくない。世界の趨勢としては比例代表制であろうが、こちらは小党分立の恐れがあり、総合得票率5パーセント以下の政党の切り捨てを採用しても、連立政権になることが多く、政党の公約が曖昧になる。
選挙民が投票に際して候補者の政策や実績を詳細に検討して意志決定をすることは容易ではなく、ともすれば一般の世評とか人気によって選ぶことになりがちである。その場合、衆愚政治を避けるために、どうしても排除したい候補者にマイナス票を投じることができるようにしてはどうかという意見がある。しかし、近代の国家はどこもこの種の「貝殻追放」を認めていない。
私は、1917年にアメリカで最初の女性下院議員になったジャネット・ランキンという人の伝記を書いた(麗澤大学出版会刊『一票の反対』)。彼女は以下のような、なかなか魅力のある「累積投票法」を提案している。すなわち、首長選挙のように一人を選ぶ場合であっても、地方議会の選挙のように複数の当選者を出す場合であっても、投票用紙には全候補者の名前が印刷してあって、選挙者は候補者に順位をつけて投票する。そして、集計の結果最低得票の候補者の票は第2順位以下の候補者のもとに集計され、この手続きを最終決定まで繰り返す。こうすれば、A候補が最多得票者であっても、B候補とC候補の見解が似ていたり、「Aは絶対に嫌だ」という人が多かったりすれば、BかCが当選する。コンピューターを使えば簡単に計算できるし、最も公平に民意を集約できる。
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