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2017-02-24 00:00
トランプ大統領の中東政策の危うさ
船田 元
衆議院議員(自由民主党)
先日はイスラエルのネタニヤフ首相とトランプ米大統領が、ホワイトハウスで会談した。伝えられるところによると、トランプ大統領はこれまでアメリカがパレスチナ問題でとってきた態度を大きく変える見解を示したという。これまでの常識は、イスラエルとパレスチナ自治区が共に存在することを目指す「国家共存」だったが、今回はこれにこだわらず、双方の話し合いにより「一つの国家」を目指しても良いということ。さらにはイスラエルの首都を、テル・アビブからエルサレムに移しても良いという見解である。
30年ほど前私もエルサレムを訪れたが、ユダヤ教の聖地「嘆きの壁」、イエス・キリストが十字架を背負いはじめた「聖墳墓教会」、そしてイスラム教第三の聖地「岩のドーム」が、半径500mの間に集結していた。成り立ちは全く異なるが、偶然にもこれら三つの宗教の重要施設が集まってしまったのは、歴史のいたずらなのだろうか、と感慨深かったことを今でも思い出す。しかし、それだけに、ユダヤ教信者からもイスラム教信者からも受け入られず、対立が続いてしまっているのだ。国連も、多くの国も、エルサレムをイスラエルの首都とは認めていない。しかし、トランプ大統領は、ここにアメリカ大使館を作ってしまおうと言う乱暴な議論を始めた。
また歴代のアメリカ大統領は、4次にわたる中東戦争を沈静化させ、イスラエルとパレスチナ暫定政府をはじめとするアラブ諸国の間で、和平を結ぶために大変な努力を継続してきた。かつてのカーター大統領が目の下に隈を作りながら、エジプトのサダト大統領とイスラエルのベギン首相との間のキャンプ・デービット合意に漕ぎ着けたこと、クリントン大統領がパレスチナのアラファト議長とイスラエルのラビン首相を握手させたこと、ブッシュ大統領がアッバス議長とシャロン首相をテーブルに付けたことなど、鮮明に思い出す。これら過去のアメリカ大統領が政治生命をかけて追求してきたパレスチナ問題解決の努力に対して、イスラエル寄りのトランプ発言は、冷や水を浴びせかけるばかりか、水泡に帰すようなものだ。イバンカ・トランプ氏の夫、クシュナー氏が生粋のユダヤ教徒であることが背景にあるのかもしれないが、中東地域に与える影響には計り知れないものがある。
沈静化させた中東戦争が再燃させるか、アラブ過激派のハマスが各地で攻勢をかけるか、核開発を抑制しようとしているイランを逆戻りさせるか、弱体化しつつあるシリアやイラク国内のISにはのきk新たな力を与えてしまうか、我々は恐れを持って注視せざるを得ない。同時にアメリカ外交のプロが、本気でトランプ大統領の考えを修正させることを、心から願わずにはいられない。
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