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2017-03-23 00:00
上級英語による発信力をもつ人材を育成せよ
大井 孝
大学名誉教授
日本で行われる国際会議や専門家の参加による公開の国際セミナーなどの多くの場合には、外国人専門家が英語で発言し、日本人専門家が日本語で発言する。そこでは主として日本人である英語日本語の同時通訳者が介在して、専門家同士の意見交換や日本人聴衆の理解を助けることになっている。日本で開催される国際セミナーなどでは日本人発言者は原則として日本語で発言することが暗黙の規定・慣習になっているようである。この方式や慣習は日本の国際化開始が叫ばれた1960年代後半以来のものである。1990年代以来の「グローバル化」時代の到来以後も、上記の傾向は変わらない。奇妙なことに、英語学習の普及や奨励と平行して、英語通訳の需要が増大し続けている。
日本人の聴衆がいる国際セミナーなどでは、大部分の日本人参加者が日本語使用なので、英語に堪能な日本人発言者がいる場合でも、その人は自分一人が英語で発言することに遠慮して、会場では日本語で発言し、不本意ながら、場合によってはご本人のものよりも劣るかもしれない英語力を持つ通訳者に頼ることになる。理系、技術系の会議などの場合ではなく、社会科学・人文科学系の主題を扱う会議などの場合には、発言者の使用する語彙が重要となる。通訳を介する場合、日本人参加者の知的な日本語による発言や論理の展開が、日本人通訳者によって、原発言者の使用した知的レベルでの日本語の語彙には相当しない平易な英単語使用で辛うじて大意が伝えられて行く危険性が生ずる。会議の主催者や参加者が会議の後で、通訳の録音を聞き直して、訂正を求めるということは不可能である。通訳者が介在する会議では、「大体そんなものだ」という諦めと妥協でことが進んでしまう。今後、何年待てば、国際会議で日本人発言者が自前の英語で発言できるようになるのだろうか。
対策としては、すこし時間を要することではあるが日本人参加者が、国際会議などで英語で発言できるような上級英語の発信力を習得すること以外にはありえない。英語学習の商業市場を席巻し続ける「実用英語力」検定試験での上位成績は国際会議で発言できる英語能力とは全く次元の異なるもので、まさに英語表現ではirrelevant なものである。いわゆる日常生活で平易な「英語の使える日本人」を育成するという次元の英語教育と国際会議で発言できる「英語の使える日本人」を育成する次元の英語教育の二重構造を早期に導入する必要がある。
日本の英語教育学界、実業界、官界、政界は小中高校での英語教育のみに注力しないで、大学生・社会人のための上級英語習得の必要性を強く再認識し、「国際会議で英語で発表し、議論できる人材を育成する」ことを急務として、それに真剣に取り組むべきであろう。安易な短期留学での日常生活用英会話力の習得と知的英語力の涵養とはまったく次元の異なるもので、上級英語習得、国際会議向けの論理構築法の基盤は日本国内でも十分に達成可能である。知的英文の多読とその結果としての知的英作文力の習得がその基盤の不可欠の一部となる。現在では上級者向けの様々な視聴覚教材も容易に入手可能である。このような上級英語使用能力を備えた真の「グローバル人材」の育成には、既存の学校教育制度の枠の外で、特別にその育成の場を設定することが必要であり、当日本国際フォーラムのような公益団体がその育成を唱導されることが強く望まれる。
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