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2007-04-20 00:00
核軍縮に一条の光?
堂之脇光朗
日本紛争予防センター理事長
3月16日の藤原宣夫氏の投稿「核兵器の全面廃絶の願いをこめて」に同感である。本年はじめのウォール・ストリート・ジャーナルに掲載のシュルツ、ペリー、キッシンジャー、ナン論文は言うまでもなく米国の超党派の良識を代表するものである。単純化を恐れずにこれを要約すれば、冷戦時代には機能した核抑止力への依存は今日の世界では核兵器以外による抑止力に移行すべきであり、加えて核兵器を手にするようなテロリストには「抑止力」そのものが無意味である。この際米国は核兵器の全面廃絶に向けた大胆なビジョンを打ち出し、他の核兵器国にも同調を求めるべきである。さもなければ世界は核拡散の新時代に突入し、核兵器使用の危険性は一段と高まり、経済的コストも冷戦時代以上に高くつくことになろう、との趣旨である。核兵器全廃に向けての8項目の具体的ステップも示されている。
その後、3月中旬には、2010年NPT運用検討会議へ向けての準備プロセス開始を前に恒例のモンテレー研究所主催の勉強会がアヌシー(仏)で開催されたが、これに出席した米国のフォード核不拡散特別代表が席上配布した4論文が注目された。これを阿部信泰駐スイス大使の「軍縮ネット」を通じて入手したので一読してみた。このところ米政府の核軍縮への強い関心を示す発言がなかっただけに、フォード代表がNPT条約の掲げる核兵器全廃の目標達成のために米国以上にコミットしている国はなく、これを実現可能とならしめる国際環境をつくり出すための率直な話し合いを始めようではないかと繰り返し強調していることに意を強くした。
この論文も単純化を恐れずに要約すれば、米国はこれまでにも誇るに足る核軍縮努力を行ってきているが、核兵器全廃についてもそれが可能となる国際環境を整えるべく各国と話し合いたい。昨年の北朝鮮の核実験の後には米国の核抑止力の再確認を求めるアジア諸国があるなど、核抑止力は核不拡散の面からも有用な役割を果たしているが、米国は抑止力を核兵器のみに依存する政策をすでに修正しつつある。核兵器全廃を可能ならしめるためには核不拡散体制が十分に確立されることが前提であり、いかなる国も個人もこれに反して核兵器を手に入れることができないようにするため世界の諸国が協力し合う必要がある、との趣旨である。未完成のリストではあると断った上で核兵器全廃を可能ならしめる6項目の条件も示されている。
希望的な見方をすれば、年頭のシュルツ氏などの提案に応える形での動きと言えないこともない。ブッシュ現政権の核政策に大きな変化がみられるわけでもなく、核不拡散と核兵器全廃への道のりが極めて厳しいことに少しも変わりはないのであるが、歓迎すべき動きである。最近では米国の外交政策に難癖をつける向きが多いが、こと核軍縮に関しては米国の納得する方法でなければ前進はあり得ない。「核軍縮に一条の光?」であり、この光が明るさを増すことを願いたい。わが国は米国の同盟国であると同時に率先して核軍縮推進を訴えてきた伝統と実績があるので、あらゆる機会を捉えて努力を尽くすべきであろう。
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