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2017-05-08 00:00
尖閣防衛に海保の飛躍的増強が必要
鍋嶋 敬三
評論家
中国の「海警」による尖閣諸島領海侵入で東シナ海の波はますます高い。2012-16年の5年間に領海侵犯は延べ552隻、接続水域への侵入は3416隻を記録、2017年1-4月だけで領海に39隻、接続水域へ215隻が侵入した。2016年8月には200隻以上の漁船が押し寄せ、「海警」が1日で15隻も接続水域に入り、最大6隻が10-11回領海侵犯した。最近の特徴は(1)4隻態勢で侵入する、(2)領域警備には過大で通常は駆逐艦に装備する76ミリ機関砲を備えた排水量1万2000トンの巨大な「海警2901」を配置したことである。中国の狙いについて海上保安庁は「我が国の主権を侵害する明確な意図を持って、実力によって現状変更を試みる」ものと分析している。
2008年12月、中国の公船2隻が初めて尖閣周辺の領海に侵入した。日本を公式訪問した胡錦濤国家主席が福田康夫首相との間で「戦略的互恵関係」を推進する共同声明を発表したわずか半年後であった。その後の継続的な進入を見ても、日本に隙あらば尖閣に上陸、奪取する構えが明白である。日本政府は2016年の大規模進入を受けて、関係閣僚会議(12月21日)で尖閣領海警備強化のための体制整備を決定、中国公船の大型化、武装化に対応できる巡視船や航空機、基地の整備に取り組む。2017年度当初予算として2106億円を計上した。しかし、新幹線整備費2630億円を大幅に下回り、しかも半分が人件費(定員13744人)だ。全国11の管区に配置される巡視船を134隻から3年後に142隻に増やす計画だが、今年度の巡視船艇や航空機の整備費は484億円に過ぎない。これでは「海国日本」の名が泣く。
海上保安庁は尖閣警備のため大型巡視船14隻による専従体制を敷いた。ヘリコプター搭載巡視船3隻、大型巡視船2隻などの整備を進めるが、実際の配備は2-3年先である。新型ジェット機による24時間監視体制が完成するのは2019年度になる。尖閣だけでなく巨大地震・津波などの大災害、原発テロや海洋調査の強化も重要な喫緊の課題である。機材のほか基地の整備や要員の教育、訓練も平行して行わねばならず、長期の計画策定と予算の大幅な増額が待ったなしである。中国の領海侵入には政治的、外交的な圧力として使う意図が込められている。古くは1978年4月、延べ357隻の漁船が尖閣の領海を侵犯した。日中は平和友好条約の交渉中だった。条約は10月の鄧小平来日で批准、発効したのだが、交渉の大詰めで対日圧力に使ったのは明らかだ。1996年に日本が排他的経済水域(EEZ)を設定した直後に海洋調査船が領海に侵入した。
中国「海警」は海上における法執行機関であるとともに「軍の一部を構成する軍事力の一つ」(海上自衛隊幹部)であることも忘れてはならない。法執行だけなら必要のない76ミリ砲を搭載しているのはこのためだ。中国海軍が沿岸警備から東シナ海、南シナ海という外洋へと活動拡大に従って「海軍を補完する第2の海軍力としての役割を目指している」(同)と見られている。海保の対応能力を超える事態には海上自衛隊の「海上警備行動」が発令されるが、両者の日常的な緊密な連携が欠かせない。「領土・領海を守る」という固い決意と抑止力の備えがなければ侵略する側が行動を起こす誘惑に駆られるのは歴史が示す通りである。いったん占領されれば、原状回復は武力紛争なしには不可能である。安倍晋三首相は2016年3月、海上保安学校の卒業式に歴代首相として初めて臨み、「海上保安庁の役割はいっそう重要性を増す」と激励した。海に囲まれた日本を自らの手で守る海上保安体制の一層の強化に強力な政治指導力を発揮することが必要である。
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