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2017-05-11 00:00
(連載1)最悪の時に行われた日露首脳会談
袴田 茂樹
日本国際フォーラム評議員
4月27日、28日のモスクワでの日露首脳会談は、シリア問題、北朝鮮問題などで欧米、特に米国とロシアの対立が最も先鋭化しているという最悪の時に行われた。しかも「首脳会談ありき」で、機が熟していないのに「格好をつける」ためにバタバタと無理な準備が行われた。欧米とロシアの関係が最悪の時の日露首脳会談は、微妙な対応が求められる。一方では、領土問題解決のために、プーチン大統領との信頼関係醸成に努力する必要がある。しかし安倍首相はトランプ大統領との密接な関係も世界にアピールしてきた。この状況では、日本の国際的な立ち位置が問われることになるし、米露双方から信頼を失う可能性もある。安倍首相はトランプとの密接な関係を世界に誇示し、シリア問題、北朝鮮問題では米国の立場を全面的に支持してきた。この状況を見てプーチンは、「日本は米国と一体」との従来の見解を一層強め、日本への不信感も更に強めた。プーチンは、ミサイル防衛問題などでも、日米安保や日米の軍事協力に強い警戒心を抱いている。
したがって「トランプを最も知っている安倍首相」が、先鋭化した米露関係の仲介をするというのは無理であり、それが可能と考えるのは、日本の影響力の過大評価である。トランプが大統領になったばかりで「トランプWho?」の時代には、トランプと最初に密接な関係を築いた安倍首相には特別の関心が払われた。しかしそのような時代はすぐ終わり、ロシアはすでにシリア問題などでトランプの発想法や行動様式を知り尽くしているし、それに強く反発もしている。しかも、ティラーソン米国務長官が直接ロシアの主脳と長時間話し合っている。米露関係では、安倍首相の出番ではない。
日露首脳会談で実質的に具体化したのは経済、医療、文化交流などの28の協力で、中でも経済協力が中心だ。ただ、プーチンが記者会見で述べた「ロシアと日本のガスパイプラインや電力網の建設」には、様々な問題がある。ロシアとウクライナ・欧州とか中央アジア、コーカサスの間では「パイプライン戦争」と称される事態も生じている。ロシアと北方領土問題を抱える日本は、ロシアからのガス輸入関しては、戦略的に柔軟性のある液化天然ガスを考えるべきだろう。
平和条約締結の重要性は日露の両首脳が強調するが、領土問題の解決(4島の帰属問題の解決)に関するロシア側態度には、軟化の兆しはまったく感じられない。プーチンは「第二次世界大戦の結果南クリル(北方4島)は露領となり国際文書でも確認されている」という態度を2005年9月以来一貫して主張しており――それ以前は逆に4島の帰属問題が決定していないこと、即ち領土問題の存在をプーチンも認めていた――その見解は今も変えていない。昨年12月の訪日の前にもその観点から、「第二次世界大戦の結果として確立された国際法の基盤は崩さない」と強調している(2017.12.7)。即ち、平和条約締結の重要性は両国が認めているが、ロシア側は平和条約締結と領土問題は切り離しているのである。しかし、日本側としては、領土問題の解決なしの平和条約締結はあり得ない。この点では、両国首脳がサシで話しても、平行線のままである。(つづく)
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