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2017-05-12 00:00
(連載2)最悪の時に行われた日露首脳会談
袴田 茂樹
日本国際フォーラム評議員
北方4島での共同経済活動に関して、この5月に現地調査団が送られる。ロシア側は、共同経済活動は「あくまでロシアの法の下で」との態度を崩しておらず、日本側が言う「特別の制度」を認めていない。肝心のこの問題について、今回の首脳会談でも合意は出来ていない。ロシアの日本問題専門家の中には、「まず、共同経済開発を進めて4島を日露共通の子供にする。誰の子かを決めるのは次の段階でよい」との見解もあるが、論理的に不可能だ。というのも、どちらの法の下で共同経済活動をするのかが、決まらないからだ。また共同経済活動に大いに協力した後に、「4島はロシア領だ」と主張されたのではたまらない、との不信感もある。
北朝鮮問題では、日露の立場が全く異なる。日本は対北朝鮮対応では「あらゆる選択肢がある」つまり武力対応も辞さないと主張する米国を支持し、共同軍事演習も遂行中である。これに対して、ロシアは六者協議の再開など、あくまで「話し合いでの解決」を主張している。かつての六者協議は北朝鮮の核やミサイル開発を阻止できなかった。それは単に最貧国の北朝鮮を国際政治の主役に祭り上げ、彼らに核・ミサイル開発の時間を与えただけだということは、もはや周知の事実である。筆者は武力対応を支持しているのではなく、その現実的可能性を背景にして初めて「交渉による譲歩」を得られる、という冷厳な現実を指摘しているのである。ロシアはウラジオストクと北朝鮮の羅先(ラソン)の間に、日本が輸出入禁止物資などの密輸で入港を拒否している貨客船万景峰号(マンギョンボン 総トン数9672 定員350)を5月から月6回定期運航する。貨物と出稼ぎ労働者の運搬などで、ロシアが対北朝鮮経済制裁の新たな抜け道になる可能性がある。
外相、国防相閣僚会議いわゆる「2プラス2」は、12月の日露首脳会談後に復活された。クリミア併合、ウクライナ問題で対露制裁が開始された後、ロシアとこの「2プラス2」を復活させたのは日本のみである。この復活は、ロシアが昨年5月のソチでの首脳会談で求めたもので、対露制裁継続中にこの枠組みを復活させることは、ロシアにとっては国際的な対露制裁に楔を打ち込むとの意味があった。ロシアのショイグ国防相はこの閣僚会議に関して、「ロシアは他の国には提供しない多くの情報を日本に提供できる」と述べた。換言すれば「日本も他の国に提供できない多くの情報をロシアに提供せよ」との意味になる。このような閣僚会議を復活させた日本の対応が果たして正しかったのかが問われる。
最後に、日露の経済協力の在り方について、筆者の私見を述べたい。私は、日本政府の経済協力は平和条約交渉と並行して進めるべきだと主張している。もちろん日本の民間企業が自らのリスクでロシアに進出するのは、一般的には――つまり国際的な対露制裁などが実行されていない場合などには――領土問題と関係なく実行しても構わないと考えている。しかし日本政府が国際協力銀行、JOGMECなど政府関連組織を通じて対露経済プロジェクトに融資、出資する場合には、経済協力と領土交渉は共に並行して進展させるべきである。国民の税金を投入する以上、経済協力だけを「食い逃げ」されることに、国民は納得しないだろうからだ。(おわり)
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