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2017-05-22 00:00
日本の対ロ外交を憂う:日本国際フォーラムへの遺言
澤 英武
外交評論家
長い間日本国際フォーラムの会員として勉強させていただきました。米寿を迎え、老兵の身となったいま、感謝あるのみです。唯一の心残りは、肺炎で入院したため、昨年11月14日開催の「日ロ関係に関する拡大政策委員会」(安倍対ロ外交をめぐる意見交換会)に参加できなかったことです。私見では、東郷和彦氏が主導してきたイルクーツク首脳会談が北方領土交渉迷走の原因と考えています。
せっかく1993年の「東京宣言」で四島一括返還への正道が確立したのに、それを無視して対ロ外交を「二島先行返還」という邪道に迷い込ませたのです。これを「近道」と錯覚したのだけれども、それは「けものみち」だったのです。その先にクマが待ち構えていた、の図でしょう。東郷和彦案(三段飛び解決案)を鈴木宗男氏が取り上げ、森氏に取り入ったのがイルクーツク会談でした。いったんは小泉首相が潰したものの、野田首相に取り入った鈴木宗男氏の工作で安倍首相への政権交代時に引き継がれて、今日に至っています。
これが、私の見解です。安倍さんの朝貢外交では、対ロ外交の道は開けません。交渉には、飴(あめ)と鞭(むち)の両方が必要です。しかし、安倍さんはロシアが困ることは何一つしていないからです。困ること、それは、「北方四島の不法占領」を国際社会に訴え、国際社会を味方につけることです。とりわけ、中曽根・レーガン、小泉・ブッシュ時代のようにアメリカを味方につけることです。無期限の対ロ交渉で、日本が失うものは何もありません。困るのはロシアだけです。
安倍さんからプーチンに決別状が送られれば、これが日本有利のカードになります。それが、せめてもの老兵の願いです。駄弁を弄しました。21世紀を迎えて日本国際フォーラムのよりいっそうの頑張りを期待しております。
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