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2017-06-26 00:00
対北朝鮮、新たな選択肢は可能か?
鍋嶋 敬三
評論家
北朝鮮の核・ミサイル開発はスピードを弱める気配がない。アジアの安全保障への最大の脅威に対する手詰まり感が強まる中、「一時凍結」案も浮上し、混迷は深まるばかりである。トランプ米大統領は6月20日にツイッターで北朝鮮問題について「中国の習国家主席の努力は大いに認めるが、うまくいっていない」と述べ、いら立ちを隠さなかった。翌日のワシントンでの米中外交・安全保障閣僚対話では米中間の溝の深さが露わになり、共同声明の発表もなく記者会見に中国代表は姿を見せなかった。ティラーソン国務長官は会見で北朝鮮問題が「米国の最高の安全保障問題」と位置付け、中国には北朝鮮に対して「より大きな経済的、外交的圧力をかける外交的責任がある」と強い調子で圧力強化を要求した。ニューヨーク・タイムズ紙は中国の戦略が「時間稼ぎと現状維持」と指摘したが、トランプ政権が中国に失望して米中関係の悪化も考えられる情勢である。
米・中・朝関係について米ランド研究所のA.スコーベル博士は中国の最大の懸念は北朝鮮の核・ミサイル計画に対する米国と同盟国の軍事的提携の強化であり、韓国への高高度地域防衛(THAAD)配備に対する強硬な反対がその証しと指摘した。さらに、北朝鮮に強い圧力をかけると中国から離れて影響力を失うことになるので、現状維持がましな選択と踏んでいるとのだという。北朝鮮は中国に深い不信感があり、中国の影響力は限定的と分析した。一方、米国の歴代政権は中国の協力を当てにしてきたが、ブッシュ、オバマ政権とも中国が米国の期待に応える意思も能力もないと分かって失望させられてきた。トランプ政権も同じパターンを演じようとしていると批判的に見ている(米中経済・安全保障再検討委員会での証言)。
トランプ大統領のツイッターに見られるように、「こうすれば相手はこう動くだろう」と予測するゲーム的な感覚で外交をしようとしているように見える。一貫した戦略の上に立ったものでないから、予測が外れると指針のないまま行き当たりばったりの外交になる。外交政策に詳しく、カーネギー国際平和財団の会長を18年間務めたジェシカ・マシューズ氏は4月に「新たな思考をする時」と呼び掛けた。「非核化」の展望が開けないなら「最善の選択肢として核計画の凍結」を提案している。ペリー元国防長官らも凍結論を北朝鮮の大陸間弾道弾(ICBM)が米本土に到達しないよう、とりあえず開発を止める「時間稼ぎ」の方法として取り上げている。米中対話と同じ日に北朝鮮の駐インド大使がテレビ・インタビューで「米国が大規模な軍事演習を一時的あるいは永久に、完全に止めるなら、我々も一時的に(テストを)止めるだろう」と述べたと伝えられる。「凍結」を誘い水に米朝直接交渉に引き込もうとする狙いだろう。
しかし、クリントン政権以来、「非核化」や「凍結」を巡る北朝鮮との交渉で米国がだまされ続けてきた結果が今日あるのだ。マシューズ氏は「凍結」のほかの選択肢として、(1)同盟国とのミサイル防衛力の増強など米国の抑止力の強化、(2)日本や韓国の核兵器保有、(3)中立化した統一朝鮮を挙げた。日韓の核保有は論外としても、「中立化統一朝鮮」構想が米国の有力な外交専門家から出てきたことに注目すべきである。第二次大戦後、共産主義国と自由・民主主義国に分断された国家の統一は、1975年の北ベトナムによる南の武力統一、1990年の東西両ドイツの例があるが、世界で唯一残る東西冷戦の遺物である重武装で対立する南北朝鮮の平和的統一は可能か?歴史を見れば未来永劫(えいごう)に不可能とは言い切れない。南北朝鮮の分断を前提に組み立ててきた戦後日本の安全保障システムを根底から見直さなければならない事態に備えて、日本は長期的展望に立った国の在り方を構想する必要に迫られている。
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