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2017-06-27 00:00
「木に竹を接ぐ」マスコミの都議選認識
杉浦 正章
政治評論家
「一犬虚に吠ゆれば、万犬実を伝う」とは、一人がいいかげんな ことを言うと、世間の多くの人はそれを真実のこととして広めてしまうということのたとえだ。近頃の政治記事の風潮はまさにこの様相である。日経、毎日、時事の順で、今回の都議選が1989年や2009年のケースとそっくりで、都議選に敗れれば政局につながると言いはやしている。過去2回の都議選が先行指標になるというのだ。民放などはオウムのようにこの論調を繰り返しているが、本当にそうだろうか。筆者は「木に竹を接ぐ論法」だと思う。当時の状況は24年前はもちろん、8年前もつぶさに覚えているが、全く政治状況が現在と異なっている。まだ編集局内に当時を知る幹部や記者がいるだろうに、「とろい記事」を書かせて黙認しているのはどういうことか。最初に書いた日経は、6月23日付で「1989年は消費税導入とリクルート事件の直後で、都議会自民党は20議席減の43議席に終わった。続く参院選で自民党は33議席を減らす惨敗。宇野宗佑首相が退陣に追い込まれた。2009年は自民党が都議選で10議席減らし38議席に落ち込み、都議会第1党から転落した。その後の衆院選は181議席減の119議席となり、民主党に政権交代を許した」と書いて、安倍の置かれた状況につなげている。毎日は24日、時事は25日に似たり寄ったりの記事を書いて追いかけている。
まず1989年の例と現在の政治状況を比較すれば、似て非なるものであることが分かる。首相の置かれた状況が異なる。竹下登のあとを継いだ宇野宗佑は芸者に「3本指でどうだ」と月30万円で囲う話を持ちかけたスキャンダルが明るみに出て、与野党から総スカン。国民もあきれ果てて支持率は10%まで落ち込んだ。安倍の場合は宇野のような薄汚いスキャンダルはゼロであり、歴代首相と比べても外交・安保や経済上の実績は最高の部類である。加計問題なども民新、共産両党と朝日など一部マスコミが大袈裟に騒いでいるだけで、疑獄事件にはほど遠い実態である。都議選は、小池の「都民ファーストの会」などというど素人集団が、都民の民度の低さをバネにして小池の名前だけで一定の数を確保しそうである。自民党が第一党の座を確保出来るかどうかは予断を許さない。しかし小池の支持率も豊洲移転問題の失敗で馬脚が現れ、陰りが生じ始めている。都議選の勢いを駆って国政選挙に多数の候補を擁立する勢いが出るかどうかは疑わしい。都民と違って他府県は民度が高く、小池のタヌキ的な“化かしのポピュリズム”は見抜かれる。一方でこれだけマスコミから叩かれても安倍の支持率は40%台ある。毎日だけが36%だが、これはいかに毎日の調査がいい加減であるかを如実に物語るものだ。
もう1人支持率10%台で2009年に退陣したのが麻生太郎だ。まず麻生個人の首相としての資質の問題があった。しょせん器ではなかったのである。加えてかつてない早さで悪化する経済情勢、ねじれ国会における野党の審議拒否・審議引き延ばしの結果、迅速な景気対策もとれなかった。日本郵政をめぐる人事問題での総務大臣鳩山邦夫更迭などで支持率は急降下をたどった。この結果総選挙に大敗して民主党との政権交代となり、以来3年にわたる民主党政権の暗黒時代をもたらしたのだ。1989年も09年も都議選が国政選挙の惨敗につながったが、今度の場合都議選と直結する国政選挙はない。したがって国政で民新、共産が大幅に議席を伸ばす可能性はない。ましてや民進党が政権交代できるほど躍進する気配などゼロだ。その上両党は都議選でも不振である。都議選は「都議会第1党」の維持を目指す自民党と、一過性の「つむじ風」になりそうな都民ファーストによる「一騎打ち」の色彩を濃厚にしている。この結果民進、共産両党が弾き飛ばされる流れが各種世論調査でも生じている。まさに両党埋没の危機である。早くも蓮舫は選挙後に代表辞任せざるを得なくなるとの観測すら生まれているのだ。
こうした中で首相・安倍晋三が都議選の選挙応援を街頭に立って行うかどうかが注目される。民放テレビでは反安倍のバリバリの慶応大学教授片山善博らが、安倍が都議選公示後街頭に立たなかったことをあげつらい、鬼の首を取ったように勝ち誇った解説をしている。落ち目の蓮舫までが26日、「総理は表に出て堂々と話をすればいいのに、しないのは都合の悪いことがあるからではないか」と、かみついた。加えて「国会では語らず、街頭で演説に立たない。しかし自分のシンパが多い講演では、べらべら話をする。説明もできず、逃げている姿勢は、絶対に許してはならない」と挑発している。こうしたムードを打ち破るには安倍が機を見て堂々と街頭に立つしかあるまい。26日も自民党都議選候補者の演説会に出席し、応援演説をしているが街頭には立っていない。街頭演説も支持率40%以上なら十分過ぎるほどであり、戦える。風林火山ではないが「疾如風、徐如林、侵掠如火、不動如山」のうち「不動如山」から一挙に「侵掠如火」に転ずるべきだろう。たとえ負けても闘うのが安倍政治の真骨頂であるはずだ。街頭演説も自民党がフル動員して、人種のレベルが高い銀座のど真ん中で盛り上げればよい。選挙戦の常識だ。
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