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2017-06-30 00:00
国民投票の難しさ
船田 元
衆議院議員(自由民主党)
憲法改正の手続きとは、その96条が示す通り、まず衆参両院議員のそれぞれ3分の2以上の賛成により国会が発議し、国民投票において有効投票の過半数を得て、ようやく改正が実現する。しかしこれまでの改正に関する議論の中では、とにかく国会の3分の2以上の獲得が最大の主眼で、国民投票は後からついてくるといった考えが蔓延している。しかし改正手続きのクライマックスは国民投票であり、かつ不確定要素が一杯あって、なかなか容易ではない。最短で60日、最長で180日も続く国民投票運動は公職選挙法の適用を受けず、特定公務員の運動禁止、地位利用の禁止、大規模な買収などを除いては、ほぼ自由に行われる。その運動のやり方によっては、国会の多数と違う結果が生じることも十分あり得る。
現に昨年のイギリスのEU離脱をめぐる国民投票では、事前の残留優勢を覆して離脱が過半数を獲得したことに全世界が驚いた。未だにその混乱は尾を引いている。アメリカの大統領選挙も国民投票ではないが、大方のクリントン優勢に反して、トランプが勝利を納めた。国民世論がどう動くのか、予測がつかなくなっているのが現代の特徴だ。日本国憲法の改正に当たっても、9条の改正であれ、教育の無償化であれ、とにかく改憲勢力が国会の3分の2を占めている時に、早く発議してしまおうという考えは、国民投票でしっぺ返しを食らうかもしれない。むしろその可能性が大きい。
我々が目指すべきは、国会の発議において、できる限り野党第一党である民進党まで巻き込んで、賛成してくれれば上出来だが、そうでなくても、最低限反対しない、反対しても了解の上で採決するところまで持ってこないと、安心は出来ない。国論を二分する9条においては尚更である。さらに憲法改正国民投票を国政選挙と同時に行うべきとの声も聞かれるが、これは邪道である。そもそも政権や政党を選択する国政選挙と、国民全体が関わる基本的な政策選択を同時に行うことは、国民の混乱を招くばかりだ。選挙運動と国民投票運動が同時に行われれば、「かこつけた」選挙違反が横行しかねない。
百歩譲って、国民投票期日が決まった後、衆議院が解散になってたまたま同時になることは止むを得ないとしても、最初から同時投票を目指すとしたら、国民の冷静な判断を妨げるものであり、決して許されるものではない。国会の発議を目指すもの、改憲を目指すものは、もっと国民投票の重要さと難しさを学ぶべきである。
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