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2017-07-01 00:00
「日・ASEAN対話」に出席して
池尾 愛子
早稲田大学教授
6月30日午後、日・ASEAN対話が「変容するアジア太平洋地域秩序と日・ASEAN協力」をテーマとして、日本国際フォーラムとグローバル・フォーラムの主催、シンガポール南洋理工大学S.ラジャラトナム国際関係研究所とベトナム国家大学人文社会科学院の共催、国際交流基金アジアセンターの助成により、都内で開催された。日本国際フォーラムとしては、10回目の日・ASEAN対話になると紹介された。10回のうち、2000年以降、私は数回出席したと思うが、ずいぶん大きな変化を感じた。
海外からは順に、シンガポール、フィリピン、マレーシア、ベトナム、インドネシア、タイを代表する形で発表があり、日本人報告者6人がASEANからの各報告のすぐ後に1人ずつ続いた。ベトナム以外の5ヶ国はASEAN(東南アジア諸国連合)の原加盟国、つまり創設国である。ASEANはベトナム戦争の最中の1967年に創設され、同5ヶ国とブルネイ(1984年加盟)が1992年にASEAN自由貿易地域(AFTA)を構築することを決議した後、ベトナムは1995年にASEANに加盟したのである。1997年にラオスとミャンマー、1999年にカンボジアがそれに続いて10ヶ国がそろう。ASEAN6ヶ国がAFTAの構築に踏み切った主要理由は、中国が政府開発援助(ODA)受入の競争相手として現れたので、ASEAN経済の魅力を増す必要があると考えたからだ、とASEANの研究者からは聞いている。よりわかりやすくいえば、ODA、関連して海外直接投資(FDI)の受入れをより積極的に目指したのだといえる。
2004年になると、中国経済の成長が顕著になり、エネルギー資源などの大口需要者として注目されるようになる。そして中国は今や、ODAやFDIの提供者として、アジアインフラ投資銀行(AIIB)の本部を有する国として、注目されるようになっている。本対話では出なかったが、2016年には、経済成長がさらに予想されるASEANが、エネルギー資源の大口需要者として注目されるようになっている。過去の予想を上回るペースでの技術進歩によりエネルギー問題は緩和されてきた。しかし、これまで通りの技術進歩のペースでは、ASEANの経済成長は「持続可能である」とは言えなさそうである。経済成長を支えるためには、これまで以上のペースでの技術進歩が要請されているようである。
今回の日・ASEAN対話に出席して、政治や経済についての専門家のより多くに、現在の東アジアの諸問題に関心を持って研究・考察していただく必要があるのではないかとの感想をもった。この地域の安定性を目指すためには、変容するアジアに対応する人材が、ASEANにも日本にもより多く必要になっていることに間違いなさそうである。ASEANについて語るためには、ASEANのグローバルな位置づけをふまえなくてはならない。地域の安定性をめざす努力が緩むと、ASEAN内で衝突が起きかねない危惧があることは対話の中で何度か表明された。「イスラム国」兵士の流入も懸念材料である。共産主義を価値とするということが、国有企業の多さにつながるのであれば、民間の生産者の活動を基本とする市場経済とは異質であることを意味する。経済成長に伴って諸問題(challenges)が表面化するのは常であるが、諸問題には地域や時代が異なっても共通するもの(エネルギー・環境問題等)と、各地・各時代で様相がかなり異なるものの両方があるといえる。
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