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2007-05-05 00:00
ニュースの戦略的な読み方が必要
田久保忠衛
杏林大学客員教授
麻生外相・久間防衛相とライス米国務長官・ゲーツ国防長官による日米安保協議委員会(2プラス2)の合意の目玉は防衛機密保全のための包括的取り決めにあると日本のマスメディアは受け取ったのだろう。各紙一斉に「日米が機密保全協定締結で合意」の見出しを掲げていた。ニュース性から考えてそのような判断は正しいのだろうが、戦略的な読み方も必要ではないか。
共同発表を読んで先ず受ける印象は、「日本よ、核は米国が提供するから安心してほしい」のメッセージの強さである。冒頭に出てくる「米国はあるゆる種類の軍事力(核と非核の双方の打撃力と防衛能力を含む)が拡大抑止の中核を形成し、日本の防衛に対する米国の関与を裏付けることを再確認する」との表現がすべてを語っている。北朝鮮の核実験後に麻生外相や中川自民党政調会長がいわゆる核発言をしたあとでライス国務長官が来日し、米国が提供している核の傘を信用してくれと説いたのと同じ文脈だ。
日本は北朝鮮の核を恐れている。が、もっと気にしているのは中国の核を含む軍事力の拡大である。日本をはじめ米国もロンドンの戦略国際問題研究所も、中国の軍事費が1989年以降2ケタの伸びを続け、しかも実際にはこの2~3倍の予算を計上していると警鐘を鳴らしてきた。この傾向が続いて、同時に米国の核の傘への信頼が落ちれば日本は自然に核武装の方向に流れていく、と米側が考えていることは間違いあるまい。
日本の核武装を抑えるには、その口実になる中国の軍事力を牽制しなければならない。が、中国は大幅な経済成長を続けている。経済の面では国際社会に組み入れるエンゲイジメント政策を推進しなければならない。ゼーリック前国務副長官が唱えた「責任あるステークホールダー(利害共有者)」に中国を仕立て上げ、軍事面では慎重な態度を取らせる必要がある。だから、「中国に責任ある国際的なステークホールダーとしての行動、軍事分野の透明性を高めることなどを促す」との文言が登場するのだろう。
中国の軍事力は、米国が中心になって「封じ込め」なければならないほどの水準に達しているかどうか。少なくとも米国防省は潜在的脅威を感じているのだと考えられる。とすると、当然同盟国間の連携をはかるとの理屈になり、「安保と防衛の分野を含め日米豪の三国間協力をさらに強化する」ことになる。外交的には「インドとのパートナーシップを強化する」方向をすでに日米両国は打ち出している。
米国はアジア地域における中国の台頭を一定のところで押え、日本の自衛力は増強させ、豪州と連携させつつ中国との均衡をはかっているものの、日本の核保有は許さないとの手の込んだバランス・オブ・パワーを維持しようとしているのだ。
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