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2017-09-29 00:00
「誠実・愚直」Vs「生き残りファースト」の戦い
杉浦 正章
政治評論家
難破船「民進丸」から次々に人々が飛び込み、陸地を目指して泳いでいる。目指すは南海の孤島だがそこに希望はあるか。待ち構えているのは飢えと絶望と人食い人種ではないのか。生き残れるのは何人か。「生き残りをかけた決断」と代表前原誠司呼びかけた。政治家は切羽詰まると名演説をするが、前原は議員総会で「もう一度政権交代をするにはどうすべきかについて提案したい。名を捨てて実を取る。その決断を皆さんに理解していただきたい」と訴えた。民進党は公認候補を一切取り消し、全候補者は離党した上で希望の党に公認を申請する。まさに「捨て身の策」 である。諸葛孔明は天下三分の計だが、前原は自公政権と希望による天下二分の計である。しかし、驚天動地の希望ブームが生まれるかというと、生まれない。なぜなら議員バッジを付けたいが為に希望にあやかって、当選を狙うという政策なしの「野合」路線であるからだ。社会党時代からの伝統もくんで、民主当時時代に政権を担った政党が、海のものとも山のものともつかない新党に身売りをしたのだ。そこには政治理念も、かくあるべしという政策もなく、あるのは「生き残りファースト」の邪道だけである。「選挙目当ての互助会」である。もののあわれすら感ずる政治劇である。
これに対して沈黙を続けて来た首相・安倍晋三は、「選挙のために看板だけを変えた政党に日本の安全や子供の未来を託せない。そこから希望は生まれない」と切り返した。そして「誠実・愚直路線」を打ち出した。「北の脅威、少子化対策の国難を乗り切るため、誠実に愚直に政策を訴える」と述べたのだ。まさに総選挙は「誠実・愚直」Vs「生き残りファースト」の戦いの様相を示している。そこで焦点は小池が見栄も外聞も投げ捨てて、都知事を辞任して衆院選に参入するかどうかだ。希望の党を勝たせたいのか、マスコミも毎日、TBS、テレビ朝日が小池を出馬させるべく、懸命の報道を続ける。特にTBSとテレ朝は、放送の公平を規定する放送法などあらばこそで「小池出馬」を臆面もなく断定的に報道し続け“既成事実化”を図る。コメンテーターらも野党の代弁者丸出しで、聞くたびに不快感を残す伊藤惇夫が「72%出馬」と断定。しかし小池自身が否定している。「テレビは朝から晩まで小池出馬で賑わっている。都知事の後継は誰になるまで報道しているが、私は今の国会が変わらない限り都政でしっかり頑張る」と完全否定した。新聞は毎日が28日朝刊で「小池氏が出馬も、『受け皿』で高まる待望論」と報じたが、朝日は29日朝刊で毎日よりおとなしく「小池氏の出馬も焦点」と慎重な報道ぶりだった。
どうしてこのように反自民系マスコミが小池を出馬させたがるかというと、希望の党がまさに我楽多の寄せ集め状態であり、小池が代表として出馬しない限り勝てないという判断がある。政治に介入する偏向報道の最たるものだが、偏向報道が国を誤るのは古くは戦前の御用新聞の例を挙げるまでもない。新聞読者は購読をやめるという方法があるが、テレビは向こうから飛び込んでくるから、影響力に格段の差がある。放送法による免許停止も可能だが国会議員は仕返しが恐ろしくて手を付けることをしない。まさにやりたい放題の民放の扇情的なイエロージャーナリズムがはびこっているのが実態だ。自民党も“けん制”くらいはして脅かした方がいい。
朝日が慎重なのは29日の社説に如実に表れている。全体としての右傾化を警戒しているのだ。社説は「新党には右派色の強い議員が目立つ。憲法改正や歴史認識などで、自民党よりさらに『右』に位置する可能生もある。リベラルな議員の多い民進党とは明らかに立ち位置が違う」と分析している。これは左傾化新聞として総選挙が保守2党の争いとなることが嫌なのに違いない。希望が政権を奪取することはまずあり得ないが、自民、公明、維新の3党に加えて保守色の強い希望が存在感を強めれば、後は共産党、社民党の極左しかいなくなる。この国は全体として右ウイング寄りとなり、朝日のこの国を左傾化させようとする社是に全く反対の結果となるからだ。そもそも都知事選には50億円の費用がかかる。出馬は小池が掲げるバター臭いいやらしい表現の「ワイズスペンディング」に全く矛盾する。都議会の最終日は10月5日だから、それを待って立候補するとの見方があるが、小池は自らの発言の通りに、自己都合の出馬はすべきではない。小池は首相指名について「山口さんがいい」 と公明代表の名前を冗談のように挙げたが、政権選択選挙にした以上は、もっと真面目になるべきだ。選挙公示の10月10日前には首相候補を決めるべきだ。
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