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2017-10-31 00:00
北の情勢緊迫で日米首脳会談は歴史的重要性をもつ
杉浦 正章
政治評論家
5日からの首相・安倍晋三と米大統領トランプの会談は、アジア太平洋地域の安全保障にとって歴史的な重要性を帯びるだろう。掛け声倒れに終わったオバマ政権によるアジア重視のリバランス(再均衡)戦略に代わって、トランプの「自由で開かれたインド太平洋戦略」がクローズアップする。東・南シナ海で海洋進出が著しい中国と暴発を続ける北朝鮮への安全保障上の封じ込め戦略が俎上(そじょう)にのぼる公算が高い。とりわけ北朝鮮情勢に関してはギリギリまで軍事圧力を強め、徹底した経済制裁で金正恩を追い詰め、半島の非核化につなげる方針を確認する方向だろう。事態は筆者が既に指摘したように「極東冷戦」の構図で推移する流れだろう。「自由で開かれたインド太平洋戦略」とは日米同盟、米豪同盟などを基軸に、インドなどを加えて安全保障上の協力を拡大する極めて大きな戦略的な構想だ。その主眼は民主主義という共通の価値観を有する国家群の「結束による対中圧力」に置かれるだろう。折から中国は共産党大会で習近平の独裁色の強い体制を樹立し、習は南沙諸島の軍事基地化を誇示して、評価された。今度は尖閣諸島へと触手を伸ばすであろうことは目に見えている。既にオバマは尖閣への中国進出阻止抑止についてコミットしているが、トランプも同様にコミットするだろう。
こうした中で米国の有名な戦略家エドワード・ルトワックの北朝鮮政策での日本への提言が関心を呼んでいるが、総じて極東の安全保障に対する無知をさらけ出しており、一顧だに値しない。ルトワックの構想は(1)日本政府が何もしなければアメリカは何もしない、アメリカは日本の反応を見て決めるので日本が動けばアメリカも動く、(2)日本は行動すべきであり対話をやめて行動に向け準備を始めなければならない、(3)日本に残された時間はあまりなく、北はまだ日本を攻撃できる核弾頭ミサイルを持っていないと思が、しかし1年か1年半後に持つ、というものだ。基本はあいまいな用語を使いつつ日本の軍事行動を促しているとしか考えられないが、その根底には米軍の対北軍事行動によって日本の人命被害が多数にのぼることへの決意を促す“扇動”があるような気がする。アメリカが単独で軍事行動を起こせば、東京にミサイルが飛ぶ可能性があり、そのための日本の「覚悟」を促しているのだ。おまけに事実誤認がある。北のノドン200発は日本に向けられたものであり、ノドンには核だけでなく、細菌兵器や毒ガスも積載されうることを知らない。総じて論旨が荒っぽく、極東安保を理解していないように見える。日本にミサイルが飛ぶ事態への覚悟などは論外だ。
そこで首相・安倍晋三とトランプとの会談だが、トランプはあくまで北の核保有を容認せず、非核化を目指すための軍事的な備えは万全を期す方針を表明するだろう。もちろん北が核兵器を使用すれば軍事的な対応を直ちに取れる体制を維持することを約束する。いわば対ソ冷戦時代に米国が取った「瀬戸際戦略」である。米軍が北の中枢はもちろん、核ミサイル基地、ソウルを狙う通常兵器などを壊滅させる作戦を練り上げていることは確かだ。しかし、対ソ冷戦ではベトナム戦争など代理戦争やキューバ危機はあったが、一発の弾もソ連に向けて発射されていない。偶発事態がなければ、この路線を踏襲するものとみられる。安倍はトランプに軍事行動はよほどの事態でなければ成り立たないことを、公表せずに表明すべきであろう。
また、対北締め付けには日米韓3国の結束が不可欠だが、北との融和路線を時々のぞかせる韓国左傾化大統領文在寅を如何に日米側に引きつけるかが焦点だ。トランプは文との会談でクギを刺すことになろう。米国防長官ジェームズ・マティスは「米国は北の核保有を認めない。我々は外交による解決を目指すが外交は軍事力に支えられてこそ効果的だ」と述べているが、もっともだ。軍事力行使の“寸止め”戦略が続くことになる。一方、南シナ海への戦略も立て直しの必要がある。オバマはリバランスは口だけで、結局何も出来ずにパラセル諸島やスプラトリー諸島への中国進出を許してしまった。フィリピン沖のスカボロー礁も危うい状況であり、中国が目指すのは3カ所を結ぶ軍事基地化で南シナ海の支配を確立することだ。習近平は党大会で自慢げに南シナ海への進出を報告している。安倍は30日のフィリピン大統領ドゥテルテとの会談で、対北問題で連携の方針を確認した。今後米国は南シナ海への軍事的プレゼンスを高めることになろう。自衛隊も艦船の頻繁なる派遣で協力せざるを得ないだろう。
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