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2017-11-03 00:00
日本国際フォーラム設立30周年記念シンポジウムに出席して
池尾 愛子
早稲田大学教授
さる2017年11月1日(水)に日本国際フォーラム設立30周年記念シンポジウム「パワー・トランジション時代の日本の総合外交戦略」が都内ホテルで開催された。伊藤憲一代表理事・会長の挨拶により、30年前の1987年までに、シンクタンクの設立が海外で相次いでおり、日本でもその必要性が認識されて、同年3月に日本国際フォーラム設立に至った経緯が紹介された。設立当初、経済問題になるが、貿易摩擦問題に質的な変化が起こっていたことが、当時日本側の対応の中心にいて、日本国際フォーラム設立にかかわった大来佐武郎氏の『アメリカの論理 日本の対応―日米摩擦20年の記録―』(1989)から読み取れる。
1980年代、一方で日本に対して、大幅な経常黒字だけではなく、西側欧米諸国と東南アジア諸国連合(ASEAN)の各国別の経常収支における黒字までが批判の的とされるようになっていた。他方で韓国に対しては、日本は不公正貿易の批判をするという初めての経験をした。アメリカやフランスとの間では、安全保障や将来の技術開発に絡む問題として、先端工業製品の輸出が摩擦の対象となった。1984~85年には対外経済問題諮問委員会が、1985~86年には国際協調のための経済構造調整研究会が動き、大来氏は両方に参加していた。後者の報告書は座長の名前をとって「前川レポート」と呼ばれ、世の中でよく知られるようになる。
今回のシンポジウムでは、日本国際フォーラムが大型研究プロジェクト「パワー・トランジション時代の日本の総合外交戦略」を3年計画で始動させたことが改めて紹介された。このプロジェクトは4つの分科会「チャイナ・リストとチャイナ・オポチュニティ」(主査:神谷万丈・防衛大学校教授)、「ユーラシア国際戦略環境と日本の大国間外交」(主査:渡邊啓貴・東京外国語大学教授)、「『地経学』時代の日本の経済外交」(主査:河合正弘・東京大学特任教授)、「新段階を迎える日本の海洋戦略」(主査:伊藤剛・明治大学教授)からなり、4つの分科会の主査からそれぞれ現状認識と探りつつある方向性が冷静にかつ熱く語られた。そして4人のリード・コメンテーターが続くという刺激的な構成であった。もちろん、日本国際フォーラムで研究が進むプロジェクトは、これ以外にもあることもうかがえた。
世界に、東アジアに、質的な転換点が到来していることが改めてうかがえた。中国の台頭、アメリカでのトランプ政権の誕生で、30年前とは異なり、国際政治や安全保障面での考察がいっそう求められる状況になっていることがわかる。1年前、個人的には、「民主党政権が3期連続してつづくことがあるのだろうか」という思いで大統領戦を見守っていた。選挙の結果、共和党政権が誕生したものの、トランプ大統領の考えていることがわかりにくく、シンクタンク側が政策提言を提出しにくい状況が発生しているとのことであった。不確実性、不透明性が高いものの、中国経済の成長は続いてゆきそうだとの見方では一致しているように思われた。もちろん、ヨーロッパ等との協力も話に出ていた。何人かの外国人が本シンポジウムに出席していたが、どのような感想を持たれたことであろうか。
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