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2017-11-15 00:00
日本は「積極的自由貿易主義」の旗手たれ
四方 立夫
エコノミスト
TPP11が日本の主導により大筋合意に達した。カナダ及びメキシコからは不協和音が聞こえるものの、米国が撤退したにも関わらず、日本が主導して合意に漕ぎつけたことは日本外交の大きな一歩である。更に、APECの場に於いてトランプ大統領が、安倍首相が2016年TICADに於いて提唱した「インド太平洋構想」を「自らの案」として提案したことも、同じく日本外交の大きな一歩である。その演説の中で“China’s unfair trade practices and the enormous trade deficits”を取り上げ、“Private industry, not government planners, will direct investment”と述べ、“Economic security is national security.”と言い切ったことは、中国の掲げる「一帯一路構想」と対峙する姿勢を鮮明にしたものであり、中国に飲み込まれんとするアジア諸国にとっても少なくともアジアにおける「米国のプレゼンス」を確認できたことは朗報であったと考える。
一方、トランプ大統領は“I will make bilateral trade agreements with any Indo-Pacific nations”及び“What we will no longer do is to enter into large agreements”とも述べている。我が国はTPP11の他にも日EU EPAにも大枠合意しており、加EU FTAと共に、トランプ大統領に対し多国間FTAの方が結局は2国間FTAよりも米国にとって経済的利益のみならず、安全保障の面においても中国に対峙するStrategic Partnershipの構築という意味において重要であることを今後とも説得し続けなければならない。TPP合意後に加盟への関心を表明した韓国、フィリピン、インドネシア、タイ、台湾をTPP11に参加させTPP16とすることができれば米国に対して更に圧力を強めることができる。
“The Devil is in details.”という言葉があるが、大枠合意を正式な条約に落とし込み更にそれを批准するにはより一層の尽力が必要である。今後とも政官民学が一体となって関係各国省庁並びに民間団体に対しメガFTAの具体的なメリットを目に見える形で開示することにより、トランプ大統領が「オバマ元大統領は“Bad Deal”をしたが自分は“Good Deal”をした」と公言できるように「お膳立て」することが重要である。
トランプ大統領は予定していた東アジア首脳会議を欠席して帰国し、今回のアジア歴訪の主な関心事は米国の貿易赤字対策にあり、南シナ海問題に対しても突っ込んだ言及が無いなどアジアがこれまでになく米国の存在を必要としている中で、その期待に十分応えうるものとは言い難いものであった。将に今、日本がインド太平洋地域において積極的に自由貿易主義の旗手となり、米国を巻き込んで、Liberal Democracyのルールがアジアの繁栄の礎となるよう最大限尽力する時である。
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