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2007-05-16 00:00
認識薄い「普天間」の戦略的重要性
鍋嶋敬三
評論家
日米両政府が在日米軍再編計画の最終報告に同意してから5月で1年が経過した。沖縄の米海兵隊普天間飛行場のキャンプ・シュワブ沿岸部への移設、海兵隊司令部のグアム島への移転など主要な計画は関係自治体の反対でほとんど手付かずのままだ。政府は再編計画に協力する自治体への交付金支給、特に負担の重い市町村には公共事業での国の補助率を上乗せする米軍再編推進法案を国会に提出、5月中に参院で成立を目指している。
5月1日ワシントンで開催された外務、防衛閣僚による日米安全保障協議委員会(2+2)後の共同発表では「目標の2014年までに普天間飛行場代替施設を完成させることが海兵隊のグアムへの移転及び沖縄に残る施設・区域の統合など沖縄における再編全体の成功のための鍵である」ことを再確認した。そのためには強い政治的指導力が不可欠である。このままでは1996年の普天間返還に関する日米特別行動委員会(SACO)の最終報告が10年間たなざらしにされた挙げ句、仕切り直しになった轍(てつ)を踏まないとも限らない。
ワシントンでの日米防衛首脳協議でゲーツ国防長官が普天間の移設について合意の「一部を変えたりすることなく、そのままの形で実行していくことが重要だ」と久間章生防衛相に釘を指した。久間氏がかねてから地元自治体の理解を得ようと「修正」を口にしていたからだ。「2+2」後の記者会見で久間氏は合意の着実な実施を確認したことが「何よりの成果」と強調して見せた。ところがその数日後には、移設する滑走路の修正に柔軟な発言をした。県知事が公有水面の埋め立て許可権限を持っているという事情はある。だが、この種の発言は政府が修正に応じるとの過大な期待を地元に持たせる一方、米国側には日本政府が合意通りの実施に本気かどうか疑念を生じさせ、同盟の信頼関係にひびを入れるおそれがある。
普天間飛行場については、第一次朝鮮半島核危機後の1996年に米軍が策定した軍事計画が共同通信が入手した米公文書で明らかになった。代替施設の性格として「朝鮮での紛争に対する軍事行動のための発進地」で「海兵隊と国連軍参加の各国に提供される基地」と規定されている。そして「普天間配備の海兵隊の陸上、航空部隊は朝鮮有事の作戦計画に極めて重要」として、常駐70機に順次増派、最大300機の展開を想定している。
北朝鮮の軍事的脅威は2006年のミサイル連続発射、核実験によって格段に大きくなった。今年4月の軍事パレードではグアム島を含む射程5000㎞の中距離弾道ミサイルを誇示した。沖縄から海兵隊の司令部機能がグアムに移転しても実戦部隊は残る。移設後もその戦略的価値は変わらない。「普天間」に象徴される在日米軍再編の戦略的重要性に対する認識が日本政府首脳に薄いことが変革期を迎えた日米同盟関係にとって極めて問題なのである。
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