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2017-12-27 00:00
(連載2)プーチンの「誰が平和条約を締結するかは重要でない」発言について
袴田 茂樹
日本国際フォーラム評議員
昨年9月の東方フォーラムの直後にも、プーチンはロシア人記者との会見の場で、安倍首相の平和条約締結に関する情熱的な呼び掛けを、次のように皮肉った。ちなみに、この発言は筆者の知る限りわが国では報じられていない。「彼は冴えた政治家で雄弁家だ。しかしウラジオストクでの会談における彼の価値はそこにあるのではなく、彼が8項目の経済協力案とその実現について述べたことにある」。わが国には、3月の大統領選挙まではプーチンは譲れないが、当選後の最後の任期では平和条約問題で譲歩する、との予測がある。また、北方領土問題ではラブロフ外相やロシア外務省、メドベジェフ首相、ショイグ国防相などは強硬派だが、プーチンは柔軟派だとか、安倍・プーチン間には、公表されていない領土問題解決の合意がある、といった推測もある。
これまで幾度も強調したことだが、残念ながらこれらは、何の根拠もない一方的な期待だ。なお、昨年からプーチンが問題にしている日米安保条約は、1960年以来変わっておらず、最近急に問題にするようになったのは、平和条約拒否の口実に過ぎない。次に、プーチン・トランプの公式首脳会談がダナンで実現しなかった背景と、日露関係について考えたい。記者会見でプーチンはこれについての質問に次のように答えた。「それはトランプ氏と私のスケジュール、そしてわが国の関係者が調整すべき一定の儀典形式と関係しており、残念ながら公式会談は開催できなかった。そのことで関係者は処罰されるだろう」ペスコフ大統領補佐官はより具体的に次のように説明している。
「米国側代表は、彼らが唯一の時間を指定し、彼らが借り上げた場所での会談を望んだ。外交慣例上は、最高首脳の会見は、交互にそれぞれの領土で行われる。前回はハンブルグにおいて『米国の領土(米国が決めた場所)』で行われた。」(『論拠と事実』紙 2017.11.15)外国要人との会談に意図的に遅れるプーチンに、スケジュール云々を語る資格はないし、それが最大の問題でもない。問題は、外交儀礼に反してプーチンが続けてトランプ側に出向くことにある。プーチンはこれを侮辱と感じ、会談を拒否したのだ。関係者の処罰云々が、傷つけられた彼のプライドを示している。
プーチンの訪日は、昨年12月の前は2005年であり、次の訪日の約束はない。一方安倍首相は、近年モスクワやソチを訪問しただけでなく、プーチンと会うために「私は毎年ウラジオストクを訪問する」とさえ約束している。国際的には首相の対露姿勢は、彼の日露関係に対する強い熱意というより、「卑屈な態度」「日本が弱い立場にある」と見られるのではないか。事実私はある第3国の外交官から、そのことを指摘された。当然ロシア側は日本を、対等の国ではなく、弱者であり利用すべき好都合な相手としか見なくなる。今日の国際情勢下では、客観的に見るとロシアが日本をより必要としている。しかしロシア人は逆に、日本がロシアをより多く必要としていると強く信じている。これは、首相官邸の最近の対露アプローチの結果でもある。(おわり)
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