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2007-05-17 00:00
円安バブルは日本経済にとって不利だ
鈴木淑夫
元衆議院議員・鈴木政経フォーラム代表
ユーロ諸国だけでなく、米国においても、円安の行き過ぎに対する非難が強まっている。産業界の不満を背景に、5月9日の米議会下院では、人民元と並んで円の為替相場が不当に安いことを問題視し、制裁の是非を検討する公聴会が開かれた。
人民元の場合とは異なり、円については政府の為替市場介入が行われていないので、円安行き過ぎの原因は、「日本の超低金利が当分続くので円キャリ取引のリスクが低い」と見る投資家が多いためだ。前回のこの欄への投稿「いまの円安はバブルではないか?」(07.3.22付)でも指摘したように、円キャリ取引がもたらす円安を見て、一層の円安が進むとの思惑から更なる円キャリ取引が累積するという、いわば「円安が円安を呼ぶ」バブルが発生し、ファンダメンタルズから離れた円安が進んでいる。
この円安バブルは、貿易相手国にとって迷惑であるばかりでなく、日本にとっても、長い目で見れば不利である。第一に、G7における米欧の批難などを切っ掛けに、円高を恐れて我先にと円キャリ取引を解消する動きが出ると、バブルの崩壊で急激な円高が起こり、日本経済が混乱する。第二に、5月1日から三角合併が解禁されたので、円安で時価総額の下がる日本の企業は買収され易くなる。第三に、外貨建てで採算を考えるヘッジファンドなどの外人投資家から見ると、円安は日本の株価低下と同じであるから、外資流入(買収目的を除く)が少なくなり、日本の株安要因となっている。これは景気回復を支える資産効果を低下させている。第四に、円安は輸入品の値上がりや海外旅行のコストを高め、ただでさえ弱い日本の消費購買力を奪って景気を弱めている。
株式評論家は、10年1日の如く、円安は株高、円高は株安などという解説を続けるのをいい加減に止めたらどうか。グローバルに活動している日本の多くの輸出企業は、原料や部品の輸入と製品の輸出をバランスさせ、為替相場がどう動こうと連結決算ベースの利益にあまり響かないようにしている。円安や円高の製品輸出に対する影響だけを計算し、企業収益と株価にとって円安は益、円高は損などと解説するのは、いい加減にしてほしい。
この円安は、日本の利上げが不確かで当分はいまの大幅な内外金利差が続くという思惑から、円キャリ取引が累積し、それがバブルで加速していることが主因だ。従って日本の金利の先高期待を市場に生み出すことが出来れば、円安傾向に歯止めが掛かり、日本経済と株価の回復を支援することになる。日本銀行は、1~3月期の成長率が潜在成長率を引続き上回り、5月末発表のコアCPIの前年比下落率が縮小することを確認出来れば、6月にも再利上げを実施すべきであろう。7月の参院選に配慮して利上げを躊躇するような政策委員会とは思えない。新日銀法は金融政策の独立性を保障している。
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