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2018-01-13 00:00
(連載2)2018年のロシア経済を占う
袴田 茂樹
日本国際フォーラム評議員
次に、年金制度や税制に対する大統領や政府による不意打ち政策への国民の側の不信感について、記者の発言などから紹介したい。まず年金問題であるが、一般的に60歳を受給年齢とする現在の年金制度が、年金基金や政府財政の逼迫から、受給年齢が数年引き上げられるとの猜疑心が国民にある。大統領や国家の立場からすると、この年金改革をスムーズに行えるか否かが、選挙後の1918年の経済政策のポイントになる。以下は、この問題に関する「チェルニ・イズベスチヤ」の記者とプーチンのやり取りだ。国民にとって、年金額そのものが僅かな上に、年金年齢になっても数年の間年金が受け取れなくなる可能性があり、極めて切実な問題なのである。
記者:「年金受給年齢の引き上げ問題についてあれこれ語られている。多くの者が、それを時間の問題だと見ている。いつ決定はなされるのか、何歳引き上げられるのか」。プーチン:「それは非常にデリケートかつ重要な問題だ。最終的結論については、今私はあなたに述べることは出来ない。あなたは既に決定がなされているかの如く質問したが、実際にはまだ最終決定はなされていない。…国は年金を支払える状態にあるし、年金支払いに関して悲劇的事態は生じない」。ちなみに別の場で、プーチンに近いクドリン元財務相が記者から、あなたは年金受給年齢引き上げに賛成しているが、今のささやかな年金を続ける資金も国には残っていないのか、との質問を受けた。それに対してクドリンは「率直に言おう。然り、残っていない。受給年齢を引き上げないと、今の支給額も維持できなくなる財政状態だ」と返答している。(「論拠と事実」2017.11.15)
増税に関しては、「ガゼータ・ルゥ」の記者が次のように質問した。ここにも、政権に対する国民の不信感が現れている。「2018年及びその後に増税されるか。現在は、ビジネス界も国民も、次のことに強い確信を抱いている。つまり、政権は大統領選挙の前は控えているが、それが終わると全面的な大幅増税が実行されるということである。選挙後の税金は実際にはどうなるのか」。この問いに対してプーチンは、「税金に関して、あなたには同意できない」として、2018年末までは増税をしないが、その後については今語るのはまだ早すぎる、と逃げている。年金について最終決定はされていない、という逃げと同じだ。
ロシア国民は、大統領選挙までは、プーチンの人気が落ちるような政策は実施しないだろうが、選挙後は、国民に不利な改革が抜き打ち的に実施されると固く信じているのである。また、ロシア政府の発表や経済に関する公式統計を国民や専門家たちが信じていない実態も、この記者会見や諸記事においては浮き彫りになっている。2018年のロシアの経済や国民生活は、公式の予測や発表よりも相当厳しそうである。(おわり)
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