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2018-01-26 00:00
我が国の自衛隊は軍隊に他ならない
篠田 英朗
東京外国語大学大学院教授
9条改憲の行方は、どうなるかわからない。自民党は3項で「自衛隊」を明記する案と、2項を削除する案の二つを軸に議論しているようだが、世論調査の結果も曖昧なようだ。気になるのは、2項削除案が「自衛隊の軍隊化」で、3項加憲案がそれではないもの、と報道されていることだ。もしそうだとしたら、3項加憲は、いったい何なのか。そのあたりの煮え切らなさが、3項案に支持が集約されない大きな原因ではないのか。ここで政府見解を引用したい。「国際法上、軍隊とは、一般的に、武力紛争に際して武力を行使することを任務とする国家の組織を指すものと考えられている。自衛隊は、憲法上自衛のための必要最小限度を超える実力を保持し得ない等の制約を課せられており、通常の観念で考えられる軍隊とは異なるものであると考えているが、我が国を防衛することを主たる任務とし憲法第九条の下で許容される『武力の行使』の要件に該当する場合の自衛の措置としての「武力の行使」を行う組織であることから、国際法上、一般的には、軍隊として取り扱われるものと考えられる」。(平成27年4月3日答弁書)
憲法学者が「フルスペックの軍隊」ではないとか何とか、なぞなぞのようなことを大量印刷して、司法試験と公務員試験と大学定期試験を通じて宣伝しているので、話がややこしくなっている。仮に軍法を持っていないと「フルスペックの軍隊」(ガラパゴス概念の典型例)ではないとしたら、それは単に国際法に対応した国内法措置を憲法学者らが妨害しているという政治運動の行方の問題でしかない。しかしそんなことは何ら本質的な問題ではない。自衛権は国際法上の概念であり、日本国憲法上の概念ではない。国際人道法(武力紛争法)は国際法の一部であり、日本国憲法の一部ではない。武力行使を規制しているのは国際法であり、日本国憲法は後付けでそれを追認したにすぎない。憲法学者が「すべて憲法学者に仕切らせろ」といった類のことを主張している日本の現状が、異常である。
自衛隊はどこからどう見ても軍隊である。イデオロギー的なロマン主義を介在させなければ、極めて自然にそう言えるはずだ。自衛隊は軍隊である。そのことを、「自衛隊は国際法上の軍隊だが、憲法でいう戦力ではない」、と言い換えて表現しても、全く問題ない。(ちなみに拙著『ほんとうの憲法』では、「前二項の規定は、本条の目的にそった軍隊を含む組織の活動を禁止しない」という3項案を提示した。)そこで憲法学者にならって憲法優位説だかを唱えたとしても、「自衛隊は国際法上の軍隊だが、憲法でいう戦力ではない」、ということを否定することはできないはずだ。
国際法上の「軍隊」と憲法上の「戦力」がずれているというのは、小学生でもわかる議論とは言えないので、9条2項を削除したほうがいい、という考え方は理解できる。また、9条2項とともに「国際法上の軍隊」である自衛隊は半世紀以上にわたって生き続けてきたのだから、解釈を確定させる際にも、2項を維持したままでいいではないか、という議論があってもいいだろう。だがもし戦力でも軍隊でもない謎の曖昧な存在を憲法で位置づけるのが3項加憲案だとしたら、議論として弱いのは否めない。3項加憲案は、その点をはっきりさせるべきであろう。
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