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2018-01-30 00:00
日本は米国のTPP復帰に全力を
四方 立夫
エコノミスト
ダボス会議においてトランプ大統領がTPP復帰に言及した。今回の演説は昨年のアジア歴訪時よりも全般的に「アメリカ第一主義」のトーンが抑えめであり、不公平な経済活動や知的財産の盗難などを批判しながら、「米国のみならず他の全ての国々」にとって良いシステムを構築すべし、との発言もあった。急速に台頭する中国にアジアを始めとした周辺諸国が取り込まれつつあり、中国のルールが米国主導のリベラル・デモクラシーのルールに取って代わろうとしていることに対する危機感の現れであると思われる。
我が国が主導して既にTPP11が合意に達し、同じく日EU・EPAも合意され、カナダもEUとFTAを締結したことも、その背景にあるものと推察される。TPPは単なる自由貿易/投資協定ではなく中国を念頭に置いた戦略的パートナーシップであり、「自由で開かれたインド太平洋戦略」と共に、リベラル・デモクラシーのルールを守る上で欠くべからざるものである。
言うまでもなくトランプ政権とのTPP復帰交渉は難航を極めるものと予想されることから、先ずはTPP11の調印式を3月に無事完了させ11ヵ国の団結を確認した上で、新たに腰を据えて米国との交渉に当たる必要がある。従来、日本の民間企業は政治を語ることをタブーとしてきたが、TPPは自らの経済活動に直結するものであると共に我が国の安全保障にも深く関わってくるものであることから、TPPによって恩恵を被る米国の企業、経済団体、農業団体、等に対し政官民一体となって米国の復帰を訴え、彼等がトランプ政権に対しより一層その影響力を高めるように尽力することが肝要である。
先日、インドはASEAN首脳を招いて会議を開催したが、中国に飲み込まれつつあるASEANにとっても米国のTPP復帰は「中国一強」を回避し、伝統的な「政治的中立」を維持しながら日米中夫々から最大限のメリットを引き出す上で重要であり、アジア全体の利益にも直結するものである。将に今年は我が国にとって、そして自由世界全体にとって正念場の年である。
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