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2018-02-13 00:00
「日米韓」立て直しが急務
鍋嶋 敬三
評論家
韓国・平昌(ピョンチャン)五輪の開幕3日間は、北朝鮮による「平和の祭典」攻勢の場と化した。南北首脳会談を提案した北朝鮮は2月12日「南北関係改善に意義ある契機」(労働新聞)とたたえた。金正恩朝鮮労働党委員長の特使として訪韓した妹の与正氏が文在寅大統領に委員長の親書を手渡して訪朝を要請した。舞い上がった文氏は訪朝に前向きの姿勢を示し米朝対話を促したが、その前提となる北朝鮮の非核化の要求には一切触れずじまい。北の「微笑外交」にまんまと乗せられた文氏を見て平昌五輪を「乗っ取った」金委員長の高笑いが聞こえてくるようである。
平昌で見えてきたことは第一に、金正恩氏の若いながら老かいな手練手管で文在寅氏の親北朝鮮姿勢があぶり出されたことである。第二に、芸術団や応援団を送り込み対韓世論戦で勝利した北朝鮮が南北融和姿勢を演じている間は米国が米韓合同演習などの軍事行動を取りにくくなると高をくくっている節がある。第三に、日米韓による強硬路線の亀裂は北の目指すところだ。日米両国は五輪後に対北最大圧力を継続する一方で、韓国に対しても「戦列」を離脱しないよう引き留める二正面作戦を強いられる。これこそ北による日米韓分断工作の成果である。
東アジアの地政学の視点から浮かび上がるのは、一番の不安定要因が北の五輪参加のために国連などの制裁にいくつもの「例外」を作った文政権であるということだ。米国と同盟条約を結んでいる韓国が北朝鮮からの侵略の際に頼みとする米国と政治的に一致しない状況では同盟関係は機能しない。朝鮮半島有事に軍事的にも韓国を支える米国と日本(在日米軍)にとって今何が課題なのか?まずは日米韓の連携の立て直しが急務である。北朝鮮は五輪後、米国が4月にも予定する韓国との合同軍事演習の中止ないし再延期を韓国に迫るであろう。南北首脳会談を餌に韓国を揺さぶる。その間に核・ミサイルの開発は休むことなく進む。五輪で訪韓した米国のペンス副大統領は文大統領の対北融和姿勢の危うさを肌で感じたに違いない。
安倍晋三首相は与党や国内世論の反対を押し切って訪韓、2月9日の文大統領との首脳会談で微笑外交に「目を奪われてはならない」と警告、融和外交にクギを刺した。日本を射程に収めた中距離弾道弾「ノドン」の実戦配備や核弾頭の備蓄という直近の脅威に何ら変わりはない。米国は北の核・ミサイル開発阻止の決意が揺らいでいると誤解されないよう、米韓合同軍事演習を予定通り開始すべきである。米国の核の傘の提供を含む同盟国に対する「拡大抑止」の決意が揺るがぬよう同盟関係の緊密化のため、日本も防衛・安全保障態勢の強化を進めなければならない。北朝鮮の核を全面的に廃棄に追い込まなければ日本の安全は永久に保証されず、「日本核武装」論が内外に独り歩きし、それがアジアの不安定要因になりかねないのである。
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