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2018-02-19 00:00
日本への核持ち込み論に現実味
杉浦 正章
政治評論家
かつて枢密院議長の平沼騏一郎は、「複雑怪奇」との声明を残して内閣総辞職をしたが、朝鮮半島をめぐる情勢はまさに「複雑怪奇」を地でゆく様相だ。北朝鮮は日米韓の結束分断にオリンピックを使い、韓国大統領文在寅は、金正恩の妹金与正に手玉に取られて日米から離反もしかねない様相だ。対北政策の経験がわずか1年と浅い米政権は、軸足がブレ、対話はしないと言いながら「予備的対話」をほのめかす。日米韓首脳で毅然として対北圧力維持路線を維持しているのは首相・安倍晋三だけであり、安倍はここで日米韓結束の核として体制再構築に乗り出す必要がある。折から国内には核持ち込み論や核保有論が台頭してきており、北の存在は大きく日本を右傾化させる流れを作り出している。文在寅の対北大接近は、文が9年ぶりの革新政権であり、もともと選挙公約の看板政策が北との融和であった。責任はそういう大統領を選出してしまった韓国民の浅慮にある。文在寅の立場はまず南北統一が第一であり、核問題はその次の課題というところにある。この構想が荒唐無稽なのは金正恩の存在基盤が核ミサイル保持にあることを理解していない点であろう。統一が韓国ペースで進み、北が「核を放棄するから統一してくれ」と言う場面のみを想定していなければ成り立たない論理だ。そんな馬鹿げた判断の上に立って交渉を進める文は、まさに愚の骨頂であり、正気に返らすのは日米が働きかけを強化するしかない。
文政権になって以来。米韓には明らかに隙間風が吹いている。金正恩が新年の演説で、平昌冬季五輪参加の可能性に含みを持たせると、文とその側近はすぐさま友好的な対応を示した。ところが驚いたことに文は米当局者へは事前の打ち合わせを全くせず、米国側に通知があったのは、韓国が北朝鮮に南北対話の提案を行う数時間前だったという。文の融和姿勢は米韓関係に緊張をもたらしてるのは確かだ。五輪後に米国から文に対して相当な圧力が加えられるという説が強い。その最大のものは、文が渋るかに見える米韓軍事演習の実施だ。遅くとも4月には実施の方向で対韓圧力を強めるだろう。文は対北外交を理由に演習先延ばしに動く可能性がある。こうした中で、米国には対北戦略で事実上の対日最後通牒となった「ハル・ノート」並みの発言が生じている。国家情報長官コーツの発言だ。米上院で「軍事的選択肢を含めて決断の時が近づいている。北朝鮮は交渉によって核開発を放棄するつもりはない」と言明したのだ。背景には北の核ICBMの完成が近づいており、先制攻撃でこれを阻止するしかないと言う判断である。いわばトランプに「時間切れだ。決断してくれ」と促しているかのようだ。文が聞いたらぶったまげて腰をぬかすような動きだ。
一方で、米国内には対北話し合い路線を主張する空気も根強い。13日国務省報道官ナウアートは「非核化を議題とした対話を行うためには予備的な話し合いが必要かも知れない」と発言した。米紙ニューヨーク・タイムズも「米政府は北が非核化に向けた行動をしない限り対話をしないという従来の姿勢から、予備的対話には応ずるとの軌道修正に踏み切った」と報道した。同紙は「韓国との亀裂を避ける判断であり、韓国の勝利だ」と韓国を褒め称えた。しかし、同紙の判断には致命的な誤りがある。対話で何を達成するかの論拠がないのだ。対話して、北の核を取り除くことができるのか。それならば価値があるが、対話のための対話では全く意味がない。同紙独特の浅薄なる左傾化論理が露呈している。こうした米国内の軸足のブレを心配したのだろう、安倍はトランプと1時間10分にわたって話し合い、米国の真意を確かめた。内容は詳しく公表されていないが「北朝鮮の非核化をどう実現するのか話し合った」とし、日米同盟は決して揺るがないことを確認したという。日本は従来から核兵器に関して「持たず、作らず、持ち込ませず」の非核3原則を維持してきたが、政治家も国民も北に狂気の指導者が出現し、日本列島を越えてミサイルを飛ばし、核実験をしている現状を直視していないものが多いことが問題だ。非核3原則は1967年12月に首相佐藤栄作が国会答弁で述べたのが最初だが、米ソ冷戦時代と現在とでは極東情勢は月とすっぽんほどの違いがある。ソ連が核で日本をどう喝したことはないが、北朝鮮は堂々と日本を名指しで核ミサイル攻撃すると公言しているのだ。
政治家もマスコミも平和は天から降ってくるというあなた任せの論理が通用しなくなった現状をどうすべきか考える時ではないか。元幹事長石破茂が、「米国の核で守ってもらうと言いながら、日本国内に核を置かないというのは本当に正しいのか」と疑問を呈しているが、もっともだ。北大西洋条約機構(NATO)のドイツには米軍の核爆弾が10発から20発配備されている。専門家は「米国ですら信用出来ない場合がある」と指摘する。米国と北が交渉によって核搭載のICBMの製造は断念させることができた場合、それは米国への核攻撃がないことを意味するが、日本に対しては何ら問題の解決にはならない。200発あるノドンに核を搭載したら、日本は核攻撃の対象となる可能性がある。そうなれば日本は、敵基地攻撃能力の保持はもちろん、独自の核ミサイルを開発せざるを得なくなるのが、国際的な軍事常識なのである。日本が核保持に踏み切れば、極東軍事情勢は一挙に逆転する可能性を秘めている。米国にとっては最悪の事態となる。金正恩の「黒電話の受話器頭」ではそこまでの鳥瞰図を描けないだろうが、それほど極東情勢は流動性を秘めているのだ。
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