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2018-03-11 00:00
(連載2)駐韓大使不在のトランプ政権と北朝鮮問題の行方
河村 洋
外交評論家
根本的な問題は駐韓大使の件を超えたものである。ポピュリストのビジネスマンには政府と緊密な関係にある人物の知人が多くない。またトランプ氏自身も政府で働いた経験がほとんどない。よって政府高官の任命がこのように大幅に遅れている。2月28日時点でトランプ氏は41ヶ国および地域への大使の任命を終えていないが、その中にはトルコ、カタール、ヨルダンといった戦略的に重要な国々もある。さらにレックス・ティラーソン国務長官の省組織再編計画には安全保障の専門家の間から、犯罪やテロといったグローバルな脅威からの本土防衛能力を低下させ、国際舞台でのアメリカの外交的プレゼンスを低下させるという懸念の声が挙がっている。
こうした混乱はトランプ氏が大統領選挙に立候補した時から予見できたことである。トランプ氏の偏向したビジネス志向と政府に対する敬意の欠如は閣僚の任用にも表れている。『ワシントン・ポスト』紙1月11日付の記事によると、ジョージ・H・W・ブッシュ氏からバラク・オバマ氏までの歴代大統領は閣僚の80%以上が政府経験者であったが、トランプ政権では47%に過ぎない。他方で企業最高経営責任者を歴任した者はトランプ政権では28%だが、他の政権では18%以下である。
トランプ政権は資格充分な政治任用者にとっても快適に働ける場所でないばかりか、既存の政府官僚にも敬意を払っていない。トランプ氏が当選して間もない政権移行期に、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際関係大学院のエリオット・コーエン教授はトランプ陣営の一貫性のない政策と険悪な雰囲気に失望し、保守派の仲間にはこの政権に加わらぬよう助言した。トランプ氏の大統領就任から数ヶ月後の『ワシントン・ポスト』2017年4月3日付の記事では事態はコーエン氏が言った通りにネガティブに進展したことが指摘されている。
彼の政権はオバマ前大統領に盗聴されたと言って国民を欺き、人権軽視で国際舞台でのアメリカの影響力と評判を低下させ、ネポティズムによってホワイトハウスに公私混同をもたらしたのである。その結果、この政権は適性に問題のある人物を要職に登用せざるを得なくなった。これが典型的に表れているのがピート・ホークストラ駐オランダ大使のケースである。元共和党下院議員ながら外交経験に乏しいホークストラ氏は、本年1月に行なわれた大使就任後初の記者会見でオランダのイスラム教徒への恐怖感を扇動した過去の発言について厳しく問題視された。
トランプ氏はオバマ前大統領が任命した人物に代わって自分の人脈からのお気に入りを抜擢したいのだろうが、それが国内外で摩擦を引き起こしている。よって、トランプ氏は外交の立て直しのためにもアメリカが誇る外交官集団をもっと尊重すべきである。彼の人脈では人材が枯渇しているので、空席の大使には職業外交官を充てるべきだ。トランプ氏とティラーソン長官は国務省再編計画を撤回し、空席となっている大使の任務に必要な資質を身につけた人材を確保すべきである。事は米韓関係に限らない。先進諸国では公務員および外交官はメリット本位で登用され、大使は時の政権ではなく国家を代表する。トランプ大統領はこうしたグローバル・スタンダードに従うべきだろう。韓国が今のような政府と外交の混乱を見て、アメリカを信用できるだろうか?(おわり)
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