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2018-03-13 00:00
(連載1)世界との対話「ユーラシア2025」に参加して
三船 恵美
駒澤大学教授
さる、2月28日、日本国際フォーラム、グローバル・フォーラムおよび仏国際関係戦略研究所との共催による、国際シンポジウム、世界との対話「ユーラシア2025:ポストパワーシフト後の地政学」にパネリストとして参加させていただいた。改めて、日本国際フォーラムの高畑洋平先生をはじめ、関係者の皆様に厚く感謝を申し上げたい。当日は、「いまユーラシアで何が起こっているのか」という点についてお話しさせていただいた。報告時間も限られていたので、中国がどのように外交を展開しているのか、という具体的な点については、拙著の『中国外交戦略』(講談社選書メチエ、2016年刊)と『米中露パワーシフトと日本』(勁草書房、2017年刊)をお読みいただければ幸甚である。筆者は、これらの本で、パンダハガ-(媚中派)でもなければ、ドラゴンスレイヤー(反中派)でもない視角から、中国外交を論じている。
さて、「いま、ユーラシアで何が起きているのか?」という問いに対して、結論をまず一言で言うならば、中国が、「一帯一路」をとても上手に使って、パクスシニカを目指す国際秩序の再編に向かっている、ということである。この「一帯一路」について、日本の多くのマスメディアは、経済圏構想と喧伝するのが大好きである。しかし、経済的な側面は、「一帯一路」の一部分でしかない。中国の習近平は、「国と国との運命共同体」から「地域の運命共同体」、さらには「人類の運命共同体」にまで拡大し、中国と沿線国の発展を結合することが「一帯一路」の意味するところである、と繰り返し述べてきた。「一帯一路」とは、中国が主導する国際秩序形成を意味する「人類の運命共同体」の構築、すなわち、パクスシニカの世界秩序を追求する構想なのである。
中国が「一帯一路」で推進しようとしているのは、まず、「5つのコネクティビティ」を築くことである。「5つのコネクティビティ」とは、(1)政策面の意思疎通、(2)インフラの相互連結、(3)貿易の円滑化、(4)資金の融通、(5)国民の相互交流の5つである。「一帯一路」は、経済回廊の共同建設にともなうコネクティビティの形成によって、中国が主導するグローバルガバナンスを打ち立てようとする構想である。中国は、「一帯一路」を通じたコネクティビティの拡大と発展によって、「利益共同体」と「責任共同体」を形成し、やがては中国が「人類の運命共同体」と呼んでいるもの、すなわちパクスシニカの世界秩序を構築して、世界の政治経済秩序を中国が主導するグローバルガバナンスの構造へと変えていくことを目指している。中国は、「共に話し合い、共に建設し、共に分かち合うという『一帯一路』の原則の堅持」を繰り返している。「共に」という言葉を強調することによって、同盟を否定してパートナーシップによる「協力・ウィンウィンを核心とする新型の国際関係を構築しよう」と呼びかけている。「一帯一路」によって、中国は、「一帯一路」の沿線国が互いの主権・尊厳・領土の一体性を尊重し、互いの発展路線と社会制度を尊重し、互いの核心的利益と重大な懸念を尊重する必要性を強調し、共に享受する安全保障構造を築こうと呼びかけている。すなわち、「一帯一路」には、「一帯一路」の沿線国に、「膨張する中国が主張している空間」を「中国の領域」として認めさせ、人権・自由・法の支配といった欧米の普遍的な規範を崩そうとする側面もあるのである。
では次に、「一帯一路」を使って中国がユーラシアで起こしている主な点について、以下4点挙げていく。まず第一に、「一帯一路」と他の国や地域のプラットフォームとの連結である。中国は「一帯一路」を新規で創ろうとしているのではない。中国が提唱する「一帯一路」とは、既存の地域協力のプラットフォームを戦略的にドッキングさせようとする構想である。中国は「一帯一路」を沿線国と、カザフスタンの「光明の道」、ロシアが提案した「ユーラシア経済同盟」、ASEANの「連結性マスタープラン(MPAC)」、トルコの「中央回廊」、モンゴルの「発展の道」、イギリスの「イングランド北部の経済振興策(Northern Powerhouse)」、EUの「ユンケル・プラン」、中東欧諸国と中国の「16プラス1協力」、ポーランドの「琥珀の道」などをはじめ、様々な地域プラットフォームと「一帯一路」をドッキングしようとしている。(つづく)
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