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2018-03-15 00:00
(連載1)「世界との対話」および「日米対話」に参加して
河村 洋
外交評論家
さる2月28日開催、日本国際フォーラム、グローバル・フォーラムおよび仏国際関係戦略研究所との共催による、世界との対話「ユーラシア2025:ポスト・パワーシフトの地政学」と、さる3月2日開催、日本国際フォーラム、グローバル・フォーラムおよび米カーネギー国際平和財団との共催による日米対話「チャイナ・リスクとチャイナ・オポチュニティ:「自由で開かれたインド太平洋戦略へのインプリケーション」にそれぞれ参加させていただいた。両「対話」では、参加者各位から多くの有意義な質問が寄せられるなど、活発な議論が展開されており、大変勉強になりました。特に印象に残った質問としては、日本国際フォーラム上席研究員の坂本正弘氏による「アメリカは依然として中国よりもロシアの脅威を重視していて、日本とは意識の差があるのではないか?」という問題提起でした。両「対話」に参加する前から、私は中国を世界秩序への最重要脅威の一つと見ていましたが、それが東アジアという地域限定からグローバルなものになっているとの認識を深めました。そのような背景を念頭に、改めてロシアと中国の脅威について、本稿で再検討してみたいと思います。
まずロシアについては、ウラジーミル・プーチン現大統領が何らかの形で権力を掌握し続ける間は重大な脅威であり続けると思われます。その理由として第一に挙げるべきは西側民主国家への選挙介入で、これは国家の存続の根本を揺るがすものです。先のアメリカ大統領選挙でのロシア疑惑が世界のメディアを賑わせていますが、それ以前にプーチン政権はヨーロッパでハンガリーやチェコなどナショナリスト政権の誕生を支援してきました。これらの国々は冷戦直後には旧共産主義から民主主義と市場経済への移行の成功例とされてきただけに、事態はトランプ政権の誕生やフランス、ドイツ、オランダでの極右勢力の伸長以上に深刻です。第二にはシリア内戦への介入でロシアが海外での軍事活動での実績を挙げたことです。そしてロシアは中東での地歩を固めてしまい、彼の地でのアメリカのプレゼンスを相対的に低下させてしまいました。第三にはクリミア併合に見られるような非対称戦争での勝利が挙げられます。
これらはいずれも西側の防衛体制の虚を突いたものであり、第二の超大国に伸し上がる可能性が議論される中国でさえ成し得ぬ成果です。まさに旧KGB出身のプーチン大統領ならではの所業と言えるでしょう。その一方でロシアの現体制が崩壊した場合、ソ連時代から積み上げた高度な軍事技術が中国に代表される他のリビジョニスト・パワーに流出する恐れがあります。具体例を挙げれば中国には航空宇宙用のエンジン技術がないので、「国産戦闘機」といえどもロシア製のものを使用せざるを得ません。また、空母「遼寧」も元は旧ソ連からウクライナに渡った艦船を中国が買い取ったものです。そうして見ると今後の動向はどうあれ、欧米も日本もロシアをやがて衰退してゆく国と見なして安心していられるとは思えません。そもそもプーチン氏のようなナショナリストの登場は、ソ連崩壊時に西側がロシアの弱体化に安心してしまったツケが回ったものと思われます。
そして両「対話」の中心テーマとなった中国については安全保障上の脅威には日米を中心に厳しく対処してゆきながら、彼の地での経済的な機会は我々も利用してゆくべきではないかという論点から議論が深められました。安全保障に関しては東シナ海および南シナ海での「航行の自由」作戦、そしてインド太平洋地域での中国による港湾整備や海軍基地建設に関して活発な議論が交わされましたが、ここでは詳細を割愛いたします。ただ私としては、中国側との政治および社会的な価値観の違いを埋めきることなしに国際社会が中国との実利的な関係を築くことは容易ではないと思っています。それが典型的に表れているのが彼の地で度々起きている日本企業駐在員の逮捕事件で、中には中国共産党側の政治的な理由でスパイ容疑に仕立て上げられたと疑われるものもあります。(つづく)
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