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2018-03-20 00:00
米マスコミがトランプの「独断」に警鐘
杉浦 正章
政治評論家
言ってみればただの商売人が外交をやることに対する不信感だろう。トランプの対北朝鮮政策に対して米国内で危惧の声が高まり始めた。とりわけ5月に予定される金正恩との会談がうまく展開するかについては悲観的な見方が強く、北が核戦力を手放すことはあり得ないというのが“常識”になりつつある。トランプの秋の中間選挙への“邪心”を指摘する声も多い。日本にしてみても、トランプがICBM実験を抑え込んでも、日本を狙ったノドン200発の廃棄まで実現しなければ全く意味がなく、“悪夢の構図”が現出しなねない。なぜトランプが急に米朝首脳会談に乗り気になったかと言えば、韓国の特使の“口車”に乗せられていると言うことだろう。トランプは、特使との会談のその場で「よし会おう」と飛びついているが、そこには、商売人が取引先に会うような「軽々しさ」しか感じられない。世界の片隅で虎視眈々と好餌を狙う、北の体制への理解がないのだ。“口約束”でしかない韓国のメッセンジャーをまるで信頼しきっており、国務・国防両省などプロの意見を無視しているかのようだ。
情報を総合すると金正恩は首脳会談の前提として(1)非核化に尽くす、(2)核・弾道ミサイルの実験を控える、(3)米韓軍事演習を理解するなどを提案したという。その背景には国連の制裁が紛れもなく効き始めたうえに、中国までが本気で制裁に踏み切った結果、さすがに孤立化をひしひしと感じ取ったことがあるのだろう。トランプの姿勢に対して米国のマスコミの論調は極めて批判的だ。ニューヨーク・タイムズは、トランプが外交責任者であり解任されたティラーソン国務長官にも相談せず、会談の要請を受け入れたことについて「危険で理解し難い」と批判した。「十分な準備がないまま会談に臨み、北朝鮮側の要求を独断で受け入れてしまう恐れがある」と警鐘を鳴らした。また、ウォール・ストリート・ジャーナルは、「トランプ大統領との会談にこぎつけたことは金委員長の勝利だ」と皮肉っている。さらに同紙は「金氏が核放棄に関する交渉に応じるかどうか、米国も国際社会も懐疑的であり続けるべきだろう。金氏の父、そして祖父も時間稼ぎのために協議に応じ、水面下で核開発プログラムを推し進めてきた。協議に応じる見返りを手にしておきながら、すべての合意を破り続けてきた。」と看破した。
確かにトランプが問題なのは過去2回にわたる北朝鮮の約束が全て空約束に終わった事すら勉強していないことなのだ。1994年の核開発凍結の約束は、核開発継続に終わった。2005年の6か国協議における核放棄の共同声明は、翌年の核実験で反故になった。北朝鮮はその民族的特性が外交でペテンにかけるところにあることが分かっていない。トランプはいまや恒例と化した北のやり口をすこしは学ぶべきだ。そのやり口とはまず核やミサイル開発で進展を見せ、国際社会の脅威と関心を呼び、その後は韓国でハト派の政権が誕生するのを待ち、外交手段に切り替え援助を得るというやり口だ。
とりわけ重要なのは既にトランプが引っかかっている「非核化の罠」をどうするかだ。非核化と言っても日本にしてみればICBMの実験中止などで“お茶を濁され”てはたまらない。日本にとっての非核化とは北の核弾頭がゼロになり、製造もしないことを意味する。まかり間違えばトランプはその日本の立場を飛び越えてICBMと核実験の停止で妥協しかねないのだ。そのトランプの極東における核問題の浅薄さを補うのが、安倍の4月訪米だ。ここでトランプをいかに説得するかが極めて重要なポイントとなる。韓国の“伝言”だけに乗っているトランプをいかに目覚めさせるかが安倍の役割だ。
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