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2018-03-23 00:00
パックスシニカに対峙せよ
四方 立夫
エコノミスト
三船恵美駒澤大学教授の3月13日、14日付投稿「世界との対話『ユーラシア2025』に参加して」の中で展開されている中国観に大いに共感を覚える。鄧小平による市場経済の導入、並びに胡錦濤による部分的自由化/民主化により、自由主義陣営の多くは中国もやがては自分たちと似た自由主義経済に移行していくと誤解し、2008年の胡錦濤来日の際に「戦略的互恵関係」に関する共同声明が発表された頃までは、我が国のビジネス界においても“China+1”が唱えられていた。然しながら、江沢民の時代から見え隠れしていた「反日ナショナリズム」が習近平の登場によって顕在化し、特に2012年の官製反日デモにおいて鄧小平が自ら松下幸之助に頼んで建設したパナソニックの工場が破壊されたことは、従来の「日中友好」の終焉を告げるものとなった。
ソ連とは異なり、急速に台頭する中国を「封じ込める」ことができない以上、我が国としては如何に中国と「共存」していくか、が鍵になる。先ず、中国の東/南シナ海における一方的現状変更の試みに対しては、日米安保条約並びに2015年日米ガイドラインにある通り、「自衛隊は日本及びその周辺海空域並びに海空域の接近経路における防勢作戦を主体的に実施する」、「米軍は日本を防衛するため自衛隊を支援し及び補完する」を確実に実行することが肝要である。巷には昨年2月の日米共同声明に「核及び通常戦力の双方によるあらゆる種類の米国の軍事力を使った日本の防衛に対する米国のコミットメントは揺るぎない」とある部分だけを捉え、「トランプ政権になっても引き続き米国は日本を守ってくれる」と楽観する声が多く聞かれることに懸念を覚える。現在は北朝鮮の核ミサイル開発にばかり目を奪われがちであるが、我が国にとってより大きな脅威は中国である。
現に中国は核の近代化に邁進し、特に「空母キラー」は米軍にとって眼下の脅威となっており、それが2月に発表された米国の“Nuclear Posture Review”の背景の一つとなっている。又、その中には“additional allied burden sharing”が謳われており、我が国として積極的に抑止力の強化に努めることが喫緊の課題である。一方、昨年トランプ政権がTPPから離脱したにも関わらず我が国主導でTPP11の合意に達し、又、EUともEPAに合意したことは日本外交の勝利である。既に2国間交渉が思うように進展しないことに焦ったトランプ政権はTPPへの復帰を示唆し始めている。日本としては何としても米国をTPPに引き戻し、その高い水準を持ったFTAAPへと繋げ、戦後世界経済発展の基となった自由世界のルール、即ち、自由、公正、法の支配、を堅持し、それに基く広範なMega-FTAsを構築することにより中国の「一帯一路」と対峙していくことも合わせ喫緊の課題である。
共産党一党支配、そして習近平一強支配、の堅持が至上命題となった中国は、今後益々国家統制を強め、国民の不満の捌け口をナショナリズムに求めてくることは必至であろう。然しながら、現在毎年100万人を超す中国人学生が海外に留学しその3割以上は欧米であると報じられていることから、多くの若い中国人が自由と民主主義に触れ、「思想」としてのみならず「市場経済の基盤となるルール」としての重要性を認識していることであろう。未来を担う多くの中国の若者が「自由世界のルール」が中国の持続的発展に不可欠なものであることを実感することにより、現在の毛沢東時代を彷彿とさせる習近平独裁政権が、かつての鄧小平~胡錦涛時代の「中国の特色を持った部分的に自由化/民主化された市場経済」に回帰するよう、我が国としても政官民挙げて中国の「自由化/民主化」に資することも日中両国民にとって有益である。
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