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2018-03-28 00:00
安倍政権“イメージダウン作戦”は失速
杉浦 正章
政治評論家
事前の騒ぎばかりが大きくて、実際の結果が小さいことを大山鳴動ネズミ一匹というが、証人喚問はそのネズミすら出なかった。パフォーマンス野党の面目躍如というところか。加えて朝日、TBS、テレ朝の三大反安倍報道機関も、煽りに煽ったが見事空振りとなった。前国税庁長官佐川宣寿への喚問は、これを機会に安倍政権を退陣に追い込もうとする野党の思惑がことごとく外れた。改竄(かいざん)の解明が進まない原因は、野党や一部マスコミが無理矢理安倍官邸に改竄問題を直結させようと狙ったところにあり、それが挫折したということだ。共産党の小池晃書記局長は「証人喚問の意味がない。これ以上聞いても意味がない」と声を荒らげたが、もともと意味のないものを、1日3億円という膨大な国費を使って国会で取り上げることの愚かさをかみしめるべきではないか。「意味がない」ことが分かっていながら喚問して人目を引く演技をするパフォーマンス自体が「意味がない」のだ。そもそも立憲民主、希望、民進など6野党の議員はわざわざ大阪拘置所に出向き、詐欺罪で拘置中の「森友学園」の前理事長、籠池泰典被告と接見、さも隠し球を入手したかのようなそぶりを見せた。しかし、質疑を見れば新味のある発言を聴取できなかっただけでなく、蟻の一穴も開けられない体たらくであったことが分かる。刑事被告人とタッグを組む野党という“負のイメージ”が、これまたばかな民放テレビで度々流布され、パフォーマンスしか行えない野党を露呈した。
筆者が予言したとおり、前国税庁長官佐川宣寿は野党の追及に「刑事訴追の恐れのある話であるのでコメントを差し控える」との答弁に終始した。トップバッター自民党の丸川珠代の質疑応答で全てを語り、以後の質疑はその繰り返しでしかなかった。佐川は丸川に、首相・安倍晋三や昭恵夫人、今井秘書官らの関与については「一切ない」と明確に否定した。さらに国有地の売却について安倍や昭恵の影響があったかどうかも「全くない」と全面否定した。「守りの決意」が相当のものであることを伺わせた。逆に「問題は理財局の中で対応した」とあくまで理財局トップとして責任を負う姿勢を鮮明にさせた。安倍は昨年2月から、森友学園への国有地売却に自らや昭恵夫人が関わっていた場合、「政治家として責任を取る」と国会で答弁してきたが、佐川の答弁は関わっていないことを裏付けるものだ。議院証言法に基づく答弁は、虚偽の答弁をすれば偽証罪に問われるものであり、佐川にしても“命がけ”の側面がある。それにしても佐川は何も証言らしい証言をしなかったが、安倍らが関係していないことだけは、ちゃっかりと答えた。その“度胸”は相当なものである。丸川と佐川の質疑応答は実にスムーズであり、“出来レース”をうかがわせるほどで、野党も質問したが、否定された。闇の中だ。
勢い込んで質問に立った立憲民主党の福山哲郎は成果ゼロの結果について「前から過剰期待はしないでくださいと言ってきた」と言い訳をしたが、後悔先に立たずとはまさにこのことであろう。人権上限界のある証人喚問で突破口を開こうとする野党戦略は稚拙で当初から無理があったのだ。野党はさらに昭恵を始め、夫人付職員谷査恵子、前理財局長迫田英典らの喚問などを要求しているが、悪乗りもいいかげんにした方がよい。昭恵が国有地の取引に直接関与していないことは明白であり、関与した証拠もない。真相は解明されたのであり、野党は改竄の核心には迫れなかったのだ。つまらぬ偽疑惑で政権の足を引っ張るときではない。安倍政権イメージダウン作戦は失敗したのだ。
改竄問題は財務省内の調査や大阪地検に委ねるべきであり、佐川が「当時の担当局長として責任はひとえに私にある」と明白に発言している以上、財務相麻生太郎の辞任問題も遠のいた。自民党内は反安倍勢力萌芽の気配はあるが、石破茂や村上誠一郎、小泉進次郎の反安倍3羽ガラスでは力量不足で政権を揺さぶるところまで仕掛けを出来まい。折から北東アジア情勢は風雲急を告げており、安倍を外交に専念させた方がよほど国益に資することは言うまでもない。もう森友問題は「幕引き」をはかるべきだ。
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