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2007-05-28 00:00
まずはとにかくカネを出せ-日本の国際貢献
角田勝彦
団体役員・元大使
「カネがなければ知恵を出せ。知恵がなければアセをかけ」という古言があるが、実は、その前に「まずはとにかくカネを出せ」という文句が来るらしい。日本のODA(政府開発援助)の話である。政府は、昨年7月に決定した経済財政運営の基本方針「骨太の方針2006」でODA予算を2007年度から11年度までの5年間に毎年2~4%削減することを決めており、事実、07年度予算ではマイナス3%となったが、これで良いのかという問題である。
ODAには、国際貢献と直接的国益の両面で、代え難いメリットがある。政府による国際貢献の分野で、環境問題で知恵(たとえば2050年までに温室効果ガスの排出量を半減することを世界共通目標にしようという5月24日の安倍首相の提案)を出したり、自衛隊の海外派遣でアセをかいたりすることは、それなりに評価されようが、実績と今後の見込みからして、ODAが中心であることには異論なかろう。国益の分野では、我が国企業の業績への寄与や受益国との経済摩擦回避などはさておき、国連など国際諸機関での我が国への支援確保に貢献し、日本外交の基盤のひとつになっている。我が国への国際的評価の高さは、1990年代を通じ、世界一のODA供与国であったことによるところ大である。
ところが、そのODA予算が1997年度から年々減少し過去9年間に35%も減っている。他方、世界規模のODAは、テロ対策の意味もあって、着実に増加してきた(2005年は04年実質価格で1,050億ドル、2006年はイラク向け債権放棄という特殊要因がなくなり1,039億ドルへ減)。また国(ODA)のみでなく、世界エイズ基金のような特定分野を支援する国際基金やビル・ゲイツ財団のような民間組織の活動が拡大している。
この結果、2001年から首位を米国に明け渡していた日本のODAは、2006年ついに英国にも抜かれて3位に転落した(4月4日OECDが発表した暫定実績は、米国226億ドル、英国126億ドル、日本116億ドル)。この分では2010年時点で独仏にも抜かれ5位になると見られている。DACが2010年に1,300億ドルの援助実現を想定していることにも関連して、世界第2の経済大国である日本の援助減には国際的批判も生まれかねない。なお2005年2月の国連改革報告書は、国連安保理常任理事国入りを目指す国はODA実績をGNI比で0.7%とし、目標達成のスケデュールを明らかにするよう求めている(日本の場合、この尺度は2006年0.25%で、05年より0.03ポイント減っている)。
歳出削減が重要であることや援助の質の向上と実施体制を含めた効率化が必要なことは論じるまでもないが、援助額の減少への批判を、ODAの戦略的運用により克服することは困難であろう。どの国も知恵を尽くして有効な援助に努めている以上、日本の援助が特別に被援助国に感謝されることは期待できないからである。
貧困対策を中心とする(国連)ミレニアム開発目標を受け、2005年のグレンイーグルス・サミットでは、国際社会全体が2010年までにアフリカ向けODAを年間総額で250億ドル追加し倍増すること、これを含め途上国のために2010年までに500億ドルを追加支出することで合意した。小泉前首相は「今後5年間のODA総事業量について、04年実績をベースとする額と比較して100億ドルの積み増しを目指す」ことを明らかにした。国際公約である。せめてこの100億ドル積み増しの実現を確認することこそ、6月のハイリゲンダム・サミットで安倍首相に期待されるところである。
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