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2018-03-31 00:00
日本はロシアの経済発展を支援すべきである
松井 啓
時事評論家、元大使
地政学的に見れば日本はユーラシア大陸の東外辺に位置し、中国及びロシアと対峙しアメリカを背にしている。朝鮮半島はこの中心の緩衝地帯である。逆に、日本は中国の太平洋・オホーツク海、北極海への自由な出入りの障害となる位置にあり、他方、中国は日本の中東からのシーレインである南シナ海と東シナ海を扼することができる。従って日本の平和と安全保障はこの中露米3カ国のバランスの上に依拠している。中国は近年の急速な経済的台頭(GNPでは2010年に日本を抜き世界第2位)、軍事力の拡充(核・ミサイル兵器の開発、空母建設、軍事技術でもロシアを凌駕したとの情報もある)、海洋進出、宇宙開発、AIIB(アジア・インフラ投資銀行)を背景に、今般の党大会で一層権力基盤を強固にした習近平主席の下で「一帯一路構想」(ユーラシア大陸内部を東西にまたがるインフラ構築と中国とヨーロッパを繋ぐシーレインの整備)を着々と進め、「中国の夢」(パックス・シニカ)の実現を図るであろう。
他方、ソ連が崩壊し、ワルシャワ条約機構(WTO:ロシアを中心とした軍事同盟)、コメコン(COMECON:ロシアを中心とした経済相互援助会議)が消失した時に、ゴルバチョフ大統領は、NATOも解体し、ロシアを含んだ「ヨーロッパ共通の家」の構築を夢見た。ところが事態は真逆で、NATO及びEUは次々と旧ソ連圏の国々を取り込んで拡大しているので、更に東進しモスクワに肉薄してくるのではないかとの強迫観念をロシアが抱いても不思議ではない。
ソ連崩壊後ロシアの経済力は急速に下落し、特に石油価格の下落とロシアのクリミヤ併合に対する経済制裁により経済は停滞している。ロシアは依然として第2の核兵器大国ではあるが、かつてのキューバ危機のような脅威となる恐れはない。前述のような中国の経済・軍事力の急速な上昇を前にして、米欧がいたずらにロシアを仮想敵国に仕上げ軍拡競争で相互に消耗する余裕も必要もない。これ以上ロシアを弱体化させることは米欧の利益とはならない。米はロシアと外交官追放合戦を収め、むしろロシアの経済成長を助け、軍事的に中国と対峙できる能力を向上させるべきである。露中の国際政治の場での協力は便宜上のものであり、彼らは長年の宿敵であり、中国の妹に成り下がるのはロシアにとって屈辱であろう。中央アジアを範疇に入れる中国の「一帯構想」はロシアの利益とはならない。
日本はG7の唯一のアジアのメンバーであり、安倍首相は古参メンバーである。日本は米露対話促進の仲介をし、欧露間のわだかまりをほぐし、ロシアをG7の場に呼び返しG8とすることを提案できる唯一の国である。日本が未来志向で極東における中露米3加国のバランスを維持し、世界全体の安定という観点から、米国の理解、場合によっては協力を得つつ(シベリアの石油が中国に流れるのは日本アメリカにとって危険ですらある)、ロシアの経済発展、シベリアの経済開発に協力し、日露関係の強化を更に図っていくことを提案する。
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