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2018-04-13 00:00
トランプ一触即発の状態でけん制
杉浦 正章
政治評論家
この国の国会は一体どうなっているのか。シリアが一触即発で、場合によっては米露の大規模軍事衝突に発展しかねないというのに、野党はカケだのモリだの朝日新聞と民放受けする問題にうつつをぬかし、世界情勢などどこ吹く風だ。何という世界観の欠如だろうか。戦争はいったん勃発すれば、連鎖を巻き起こし、北朝鮮情勢の緊迫化につながりうる事態も想定される。米国はトランプの強硬路線に傾斜して、シリア攻撃の準備をほぼ完了させた。あとは命令を待つばかりの状況に至っている。シリアをめぐる米露の対立は抜き差しならぬ事態となりつつある。トランプはまず「口撃」から物事を始めるから、分かりやすい。シリアのアサド政権を「自らの国民の殺害を楽しむかのように毒ガスをまく獣(けだもの)」と決めつけ、一方でこれを支援するロシアに対して「ロシアはシリアに向けられたいかなるミサイルも打ち落とすと宣言している。プーチンは準備に入るがいい。米国のミサイルが来るぞ、新しくスマートなミサイルだ」とどう喝した。
トランプの行動はまず同盟国固めから始まった。イギリスの首相テリーザ・メイとフランス大統領エマニュエル・マクロンと電話会談して、アサドに断固とした対応で臨むことを確認した。マクロンはテレビで「アサド政権が化学兵器を使った証拠を握っている」と延べ、制裁を示唆。メイは英軍をシリア攻撃に参加させる方針を固めた模様だ。米欧有志連合による攻撃態勢を整えたのだ。しかし、ドイツは別だ。首相メルケルは12日の記者会見で、対シリア軍事行動について「ドイツは参加しない」と明言した。対シリア攻撃のシナリオは、東地中海に展開した米艦船や爆撃機によって多数の巡航ミサイルを発射して、軍事施設を破壊する。昨年4月には59発がシリアの空軍基地の目標を破壊している。今回はこれを上回る規模となる可能性が大きいようだ。これにロシアがどう対応するかだが、トランプの予告発言はシリアの基地にいるロシア軍兵士に避難を呼びかける性格もある。最悪の場合はロシアが反撃して、衝突が拡大し米露直接戦争に発展することだ。ロシアはシリアの基地にミサイル迎撃システム「S400」を配備しているものとみられ、反撃を受ければ米軍は無傷ではあり得ない。米露が直説砲火を交える事態になれば、史上初めてであり、事態は1962年のキューバ危機に勝るとも劣らない危機的状況である。この米国によるシリア攻撃は北朝鮮をも強く意識した地球規模の戦略であることは言うまでもない。シリア攻撃を目の当たりにした場合金正恩が、どう反応するかをトランプは片目でにらんでいる。おそらく「震え上がる」だろうとみている。トランプの狙いはシリア攻撃によって、北朝鮮に力を見せつけ、核兵器放棄に向かわせたいのだろう。
一方でロシアは北朝鮮にも同型ミサイル迎撃システムを配備しており、北はシリア軍の反撃能力を固唾をのんで見守るに違いない。米軍に対する迎撃の「予行演習」の意味合いを持つからだ。金正恩はシリアの紛争が拡大して、米軍が極東で作戦を展開することが困難になることを期待しているに違いない。戦術上2正面作戦は最も愚かな作戦と言われているが、米国が中東に専念すれば北に核・ミサイル開発の余裕を与えることになる。シリアへの対応は米国の北との交渉に影響を及ぼさざるを得ないのだ。こうした中で注視すべきはトランプ政権の中でブレーキ役が登場し始めたことだ。これまではかつてイラク戦争を推進した大統領補佐官ジョン・ボルトンのように「平和がほしければ戦争の準備をすべきだ」といった“力の信奉者”が目立った。これに対して、国防長官ジェームズ・マティスは「私の責任は必要ならば軍事オプションを用意することだ。しかし米国は外交主導で努力する。外交的手段によって外交的結果を得る」と慎重論だ。前国務長官ティラーソンも「外交的解決はあきらめない」と述べている。しかしこうした慎重論もトランプ一流の“口撃”にかき消されがちだ。トランプは11日「ロシア高官はシリアにミサイルが飛来しても迎撃すると発言したが、そのミサイルが飛来するのだからロシアは準備せよ」と“最後通牒”的な発言を繰り返している。これ以上言葉がないほど脅しまくっているのだ。ロシア外務省報道官のザハロワは「ミサイルはテロリストに向けられるべきで、国際テロリズムと戦っている合法的政権に向けられるべきではない」と批判しているが、トランプ節にかき消されがちだ。
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