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2018-04-14 00:00
(連載2)大統領選の大勝利で「ロシアは英国に感謝しなくてはならない」
袴田 茂樹
日本国際フォーラム評議員
「事実調査の結果を待たないで発言・行動するのは政治的な挑発行為」というロシア側の言い分は、一見正論に見える。しかし以上の事例から言えることは、本当に事実を明らかにしようとする動機からではないこと明らかだ。むしろ今回の事件に関するロシア側の発言にこそ、特別の政治的意図が強く出ている。というのは、過去の一連のロシアの行動は、今回の自らの発言にまったく反しているからだ。日本以外のG7諸国を始め多くの国が英国の立場を支持したのも、このようなロシア政府のこれまでの態度を熟知しており、ロシア側の言い分こそが政治的だとして信用していないからだ。
大統領選挙を前にしてロシアが英国の主張するような行動をとる動機がないというのは事実に反する。例えば、この3月に英国内でロシアの大統領選挙に投票したロシア人(3721人)でプーチンを支持した者は51.7%だった。ちなみに2012年の大統領選の時にはプーチン支持は27.7%だった。今回の暗殺未遂事件は、英国だけでなく、ロシア国民全体の「愛国心」を高揚したのだ。したがって、プーチンの選挙対策本部の報道官A・コンドラショフは、3月18日の大統領選挙におけるプーチンの大勝利に関して、「まさに国民を選挙に動員しなくてはならないときに対露圧力をかけてくれた英国の政治家たちに
謝しなくてはならない」とさえ述べた(『論拠と事実』2018.3.21)。
筆者が納得できないことは、わが国では河野外相がロシアの言い分に沿う形で「事実関係の解明が先だ。調査の進展状況を見守る」と述べ、日本政府がG7や多くの国のロシア批判には同調しない考えを示したことである。3月21日の日露外相会談後の記者会見でラブロフ外相は、「河野外相は日本政府がロシアに代わって英国政府に、事件に関連した事項の問い合わせをすることに応じた」とさえ述べた。河野外相はこの問題に関してロシアに批判や疑問を呈したのではなく、むしろロシアに同調したと述べたのである。
この問題に関して、英国をはじめとするG7諸国や他の主要国とは逆に、日本政府がロシア側の言い分に同調するのは果たして正しいことなのか。「事実調査の結果を待つべき」という論が一般論としては正しいとしても、過去のロシアの行動がそれに反していることを日本政府はどう見ているのか。この事件に関して日本政府は、結果的にロシア側の言い分に沿っている。このことが、今日の国際政治状況の中で果たして外交的に正しいのか。筆者は、ロシア側は日本を信用するどころか、逆にあまりにもナイーブだとして、内心日本を蔑視しているのではないかと懸念している。(おわり)
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