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2018-04-18 00:00
日米共同政策レポートに敬意を表する
四方 立夫
エコノミスト
この度、日本国際フォーラムが刊行した日米共同政策レポート2018「かつてない強さ、かつてない難題:安倍・トランプ時代の日米同盟」( http://www.jfir.or.jp/j/activities/reseach/pdf/180412_j.pdf )は、情緒不安定且つ予測不能なトランプ大統領を迎え、同時に戦後最大の安全保障危機が進行している中で、日米両国に対し「基本的な部分での日米の確認と協力が重要」であることを提言したことは、正に「日本版ナイ・アーミテージ・レポート」とも言うべき画期的なものである。とくに、「『競技場』と『ゲームのルール』を設定する者にはきわめて大きな利益がもたらされる」は至言であり、TPPこそ戦後米国が築きあげてきた「自由、公正、法」の支配に基く自由貿易がアジア太平洋に拡大したものであり、その最大の受益者は米国に他ならない。
昨今「諸悪の根源グロ-バリゼーション」と批判されることが間々あるが、2016年の米国大統領選挙キャンペーンに於いてはスケープゴートにされた感もあり、より深刻な問題はITを始めとする技術革新についていけない人々に対する再教育の欠如、産業構造の転換の遅れ、金融資本主義の負の側面の拡大、等にある。従い、我が国も政府レベルの交渉に加え、民間レベルに於いてもTPPを支持する米国の産業界並びに農業界に積極的に働きかけ、トランプ政権に対するより一層の影響力の行使を促すことが肝要である。ある経済学者の言葉であるが「洗えば落ちる厚化粧」をTPPに施し、トランプ大統領が中間選挙を睨み「自らの実績」であることを誇示できるようお膳立てすることにより、米国の復帰を図ることが不可欠である。
現在、習近平一強体制の確立により、習近平の毛沢東化/スターリン化が進み、アジアのみならず広く中東~アフリカ~東欧~中南米にその「中国モデル」を輸出し、各国の独裁者を支援し、戦後世界の発展を支えてきた自由主義経済の原則を根本から覆す「ゲームチェンジャー」とならんとしていることは、ソ連による支配を彷彿とさせるデージャビューである。然しながら、中国において市場経済と一党独裁の矛盾は益々拡大し中国経済は深刻な状態にあり、これが中国が急に日本の資金と技術を求めて「微笑外交」を展開し始めた背景である。既に中国による進出は、スリランカのハンバントタ港の99年間使用権の獲得において顕著に見られる通り、中国寄りとされるラオス、カンボジア等を含む多くの受恵国から「中国支配」対し抗議の声が上がっている。「権力は腐敗する」との言葉の通り、独裁政権は短期的には成果を上げても長期的には汚職と混乱を招き、結果的に経済破綻を招くことはソ連崩壊の歴史が教えるところである。
一帯一路に対峙し、「自由、公正、法の支配」と言う自由主義世界のルールに基くインド太平洋に跨るMega-FTAsを確立することは、経済的繁栄のみならず広義の安全保障を担保することであり、日本、米国、そしてアジア諸国の平和と繁栄に不可欠である。その中で日米同盟は2国間に留まらず、広くインド太平洋に跨る国際公共財としてアジア諸国からも強く期待されているものであり、これを核として政官民による重層的なNetworkを構築すべく、我が国の総合力を最大限発揮する時である。
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