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2018-04-19 00:00
(連載2)ネオコンに評価されないボルトン補佐官
河村 洋
外交評論家
ともかくメディアではイラク戦争を支持した者には誰彼構わずネオコンという語が用いられる。実際には一般にネオコンと呼ばれる者には広範囲の外交政策の権威が含まれ、ボルトン氏のように自らをはじめから徹頭徹尾の保守派だと見なすものもあれば、ロバート・ケーガン氏のように自身の思想はリベラルで伝統的な国際介入主義に基づいていると主張し、先の大統領選挙では早くからクリントン氏を支持した者もいる。メディアも外交問題の専門家も語句の使用は正確な定義に基づくべきである。しかしボルトン氏がネオコンではないとしても、国務省での長年のキャリアにもかかわらずトランプ氏をそれほど強く支持するのはなぜだろうか?トランプ氏が台頭するまで、米国内外の外交政策関係者の間では「ポスト・アメリカ志向のバラク・オバマ大統領の後はヒラリー・クリントン氏であろうが共和党主流派の誰かであろうが、アメリカの国際的指導力は回復する」と思われていた。しかしボルトン氏はクリントン氏の介入主義には非常に懐疑的であった。
その一例として挙げているのは2011年のリビア内戦への米軍の介入である。クリントン氏はリベラル・タカ派だと一般には見られているが、ボルトン氏は2016年5月時点で「リビアがテロ支援を再開しているにもかかわらず国際社会の承認なしにムアマル・カダフィの放逐に乗り出そうとしなかったのは臆病であり、またクリントン氏が言うような国連支持による人道的な介入の促進は民主党の標準的な外交政策ではあってもヘンリー・ジャクソンの思想とはほとんど相容れない」と発言している。そうしたクリントン氏の「消極」外交を批判する一方で、同年8月21日付の『ウォールストリート・ジャーナル』紙への寄稿では「トランプ氏はテロとの戦いがイスラム過激派による西欧へのヘイト・イデオロギーだと理解している。またテロ対策にはオバマ氏とクリントン氏が訴えるような法執行の厳格化ではなく、トランプ氏が訴えるイスラム教徒入国制限が有効だ」との持論を展開した。非常に興味深いことに、ボルトン氏はイランと北朝鮮でのレジーム・チェンジを主張しているにもかかわらず、その寄稿文では「法的、政治的、文化的基盤のない国でのネイション・ビルディングは一顧だにする価値がない」と述べている。
そうした矛盾はあるもの、ボルトン氏の積極的ナショナリズムとトランプ氏のフォートレス・アメリカ的な孤立主義との間にはいく分かの食い違いはある。この観点から、シリア内戦は両者にとって重大な試金石である。トランプ氏はアサド政権による化学兵器攻撃に対してイギリスとフランスとともに空爆に踏み切ったが、この事件の前にはシリアからの米軍撤退計画を示唆して軍首脳から強い抵抗を受けていた。トランプ氏は力を誇示したかも知れないが、外交問題評議会のリチャード・ハース会長は4月14日のツイッターで「アメリカの攻撃は正当なものだが、シリアの化学兵器使用には限定的な反応に過ぎない。アメリカのシリア政策には目立った変化はない、すなわちアメリカは現体制の弱体化に向けた行動はとらなかった。また今後のアメリカの政策やシリアでのプレゼンスに関しても明確になっていない」と発言している。
現在のシリア政策はロシアおよび中東政策と深く絡み合っている。ボルトン氏はトランプ氏にフォートレス・アメリカの本能から脱却するよう説得できるだろうか?問題はトランプ氏の選挙基盤である。彼らはトランプ氏がシリア問題でヒラリー・クリントン氏やジョージ・W・ブッシュ氏にようになっていると失望している。ステーブ・バノン氏やセバスチャン・ゴルカ氏といったオルタナ右翼は政権から去ったが、トランプ氏の支持者の間で人気があるFOXニュース・アンカーマンのタッカー・カールソン氏は民主・共和両党の外交政策で指導的な役割を果たす人物を非難して孤立主義を広めている。ボルトン氏はネオコン的理想主義を信奉していないかも知れないが、外交に長年携わった者としてこの政権の基盤となっているポピュリスト的な孤立主義をも乗り越えてゆかねばならない。それは非常に難しい仕事である。(おわり)
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