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2018-04-20 00:00
極東情勢で日米盤石の連携確立
杉浦 正章
政治評論家
北朝鮮をめぐる極東情勢は米中露3大国が、金正恩の取り込みに全力を傾注する形となった。当の金正恩は完成に近づいた核ミサイルを最大限使った“火遊び”で米中露と日本を手玉に取り、有利なポジションを確保したと思い込んでいる。力を背景に外交を進めようとしているが、やがてその“実力”を思い知るときが来るだろう。日本は首相・安倍晋三とトランプの蜜月関係を生かして、2日にわたる会談で対北朝鮮で軍事的、政治的、経済的に連携をとる方向を確立させた。日米首脳会談は大局的には成功したのであり、通商問題での隔たりは時間をかけて埋めて行く問題だ。日米首脳会談の重要ポイントは、北の中長距離核ミサイルに対して、日米が“撤去”への共同歩調で一致したことだ。なぜなら米国はこれまで自国に届く大陸間弾道弾(ICBM)にだけにとらわれている印象が強かったからだ。ICBMだけ除去しても中距離ミサイルがそのままならば日本の安全保障は危機的状態にさらされることになる。安倍の懸念に対してトランプは「大丈夫だ。米国の懸念はICBMだが、それより深刻な問題は君らにある。同盟国である日本の利益も含めて北と対話する」と言明した。なぜか中距離ミサイルには直接的言及をしなかったことが気になるが、あくまで日本の主張が全ての核ミサイルの包括的合意であることをトランプに確認させたことは大きい。
もう一つの問題は北がこれまで2回に渡って狡猾に世界を欺いてきたように、援助だけをとってミサイル開発をなしくづしに進めることだ。これにいかに歯止めをかけるかである。過去の交渉は全て時間稼ぎに利用され、ついに核ミサイルの完成にたどり着こうとしている状況に至った。この点日米韓では20年までに全面廃棄を迫る方向で話し合いが進んでいるようだ。非核化のプロセスが完全でないとこれまで通りの無駄骨になるのは目に見えている。そのためには工程表を確立する必要がある。国際原子力機関(IAEA)の全面的な査察は不可欠であり、核物質、関連機器の搬出までのスケジュールを立てて、それに基づく実効が重要になるだろう。トランプは安倍に「数週間以内に金正恩と会談する予定だが、成果が期待できなければ会談しないこともありうる」とを明言した。交渉が一筋縄ではいかない状況を物語る。おそらく北の核廃絶で難航しているのだろう。
こうした中で極東情勢はこのところにわかに大国による北朝鮮との接触が活発化している。火を付けたのが3月25日から28日まで北京で行われた金正恩と習近平との会談である。米国は直ちにCIA長官ポンペイオを北朝鮮に派遣、金正恩との会談を行った。今後4月27日には南北首脳会談、6月上旬までに米朝首脳会談。その後習近平の平壌訪問。プーチンの平壌訪問などと続く。まさに北朝鮮に対する大国による“取り込み合戦”の様相である。北朝鮮を取り込んで北東アジアにおける主導権を確保しようとしているのである。古来朝鮮半島は戦略の要衝であり、大国によって翻弄(ほんろう)されてきた。日本は米国と同調して、戦略的な優位を確保しようとしている。世界1位と3位の経済大国の結託は、中露を北朝鮮の経済的発展にとって大きく凌駕する力を発揮できる。その戦略はアメとムチの両面作戦である。安倍は今後の戦略について「日米両国は北朝鮮に対して核兵器を初めとした大量破壊兵器および弾道ミサイルの完全に検証可能かつ不可逆的な廃棄を求めてゆく。北朝鮮が対話に応じるだけで見返りを与えるべきではない。最大限の圧力を維持して非核化への具体的行動を実施する確固たる方針だ」とのべている。
拉致問題について安倍はトランプに金正恩との会談で取り上げるよう要請、トランプはこれに「日本のために最善となるようにベストを尽くす」と応じた。トランプは米国人も3人が拉致されていることから、いずれにしても拉致問題を取り上げることになるだろう。トランプは拉致家族とも面会しており、実情は知っている。日本と米国の被害者帰国に大きな進展がないとは言えない。しかし、いくらトランプが取り上げたにしても、拉致問題は日本固有の課題であり、米国にとっては側面援助しか出来ないのが実態であろう。最終的には日朝間で解決するしか方法はない。安倍も時期を見定めて訪朝することも検討しなければなるまい。通商政策に関しては日米の根本的なアプローチの違いが鮮明となった。秋の中間選挙を意識するトランプは、対日貿易赤字削減を重視し、調整に乗り出す構えだ。1970年代から四半世紀にわたる米国との激しい貿易摩擦で、輸出の自主規制などを迫られたことを彷彿とされる。その再来は避けるため、通商問題を協議する新たな閣僚級の枠組みをつくることになったが、経済再生相茂木敏充と、米通商代表部代表ライトハイザーは厳しい交渉を迫られるだろう。昨年1月に就任して以来、トランプは、日本のみならず世界の通商政策を引っかき回してきたが、この際日欧が一緒になって対米説得に乗り出すのが良いかも知れない。
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