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2007-05-30 00:00
国家戦略としての留学生拡大
鍋嶋敬三
評論家
安倍晋三首相が議長を務めるアジア・ゲートウェイ戦略会議が5月16日まとめた最終報告で海外からの留学生を2025年までに3倍増、35万人程度にする目標を掲げた。国家戦略の一環という位置付けである。中曽根内閣が1983年に打ち出した10万人計画は20年かけて達成したが、その後は伸び悩む。報告は「主要国でグローバル化の視点を抜きにした高等教育を考えている国はないのに、日本は大きく遅れている」と危機感を強めている。そしてアジアにおける教育分野の協力関係の強化の観点から、日本への留学生を増やす必要性を強調した。
中国を含め主要国が優秀な人材を集めようと留学生が急拡大する傾向にあり、2025年には700万人との試算がある。報告は「世界への知的貢献、影響力維持のため」質の確保との両立を前提に現在の受け入れシェア(5%)の確保を目指すとしている。留学生が「10万人」には到達したものの、問題が多いことは衆目の一致するところだ。私費留学生の割合が多く、日本語学校の就学生など生活苦から不法就労、犯罪に走るケースも目立つ。欧米に向かう優秀な人材を引きつけられる世界的水準の研究大学は限られている。外国語で教育できる大学も少ない。これは教員と学生の質の問題でもある。
知人の経済学者(在米)が日本の有力国立大学院で英語による国際経済学の連続講義をしたが、留学生ばかりで日本人学生はいなかったという例もある。その講義に関心のある学生がいなかったのか、英語に自信がなかったのかは不明だが、国際的人材の育成が眼目の一つだけに寂しい感は否めない。またグローバル化といいながら、留学生を競って採用する企業がどれだけいるだろうか。
留学生は日本の将来にとって貴重な財産になる。報告はアジアにおける「高度な人材ネットワークのハブ」を目指すことが日本経済の持続的成長を実現し、日本のソフトパワー強化の上でも極めて重要と指摘、留学生の拡大を国家戦略的課題として再認識すべきだと強調している。しかし、数を増やせばよいというものではない。一級の留学生を受け入れられるよう大学自体が研究・教育水準を高め、国際化を促進することが欠かせない。
スイスの国際経営開発研究所(IMD)が発表した世界競争力ランキング(2007年版)によると、55カ国・地域のうち日本は前年の16位から24位に後退、中国は18位から15位に上昇、初めて中国に抜かれた。米国の首位は変わらず、2位シンガポール、3位香港と続く。台湾、マレーシアも日本を上回り、東アジア勢が元気だ。日本は外国語能力が最低水準にあることも影響していいる。IMDによると、このランキングは首位(米国)に追いつく能力も示しており、中国、ロシア、インドの躍進ぶりが目立つ。このままでは日本はますます遅れを取るだろう。
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