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2018-05-09 00:00
歴史的な南北対話について
船田 元
衆議院議員(自由民主党)
去る4月27日、韓国と北朝鮮が鋭く対立して来た板門店において、3度目の南北首脳会談が行われた。過去2回は平壌での開催だったので、今回は韓国で初めての会談となった。また普段は見ることが困難だった金正恩委員長の立ち居振る舞いや肉声が、テレビの画面に大映しになったことも、初めての驚きだった。金委員長は終始笑顔を絶やさず、堂々たる態度で文在寅大統領と握手や会話を交わし、文氏の存在が薄れそうな場面もあった。昨年秋まで核実験やミサイル発射繰り返し、口角泡を飛ばしながら厳しい表情で演説していた金委員長とは、まるで別人のようである。人間とはこうも変わるものかと呆気にとられたのは、私だけではあるまい。
同じ民族でありながら冷戦に巻き込まれ、朝鮮戦争を経て分断国家になった彼らは、64年間の長きにわたって辛酸を舐めてきた。38度線という休戦ラインでは24時間厳しい監視活動が行われ、しばしば衝突事件も発生して犠牲者も出ている。離散家族の相当数にのぼるが、戦後行われてきた再会事業の恩恵を受けた人々はわずかである。南北融和や統一へに向けての彼らの強い想いは、我々にはなかなか理解出来ないものがある。
しかし、ここで浮かれてはならないとの識者の意見には同感である。首脳会談の後発せられた「板門店宣言」では、朝鮮半島の完全な非核化を目標とするとともに、休戦協定を和平協定へ 切り替えるための努力を始めると謳っている。しかし非核化の方法や期限など具体的な内容に乏しく、国際社会が求めてきた「完全かつ検証可能で、不可逆的な核の放棄」という要求に対応できるかどうかは不明である。「非核化」が在韓米軍の撤退や規模縮小を意味するとしたら、東アジアにおける安全保障のバランスが大きく崩れるという懸念もある。今後予定される米朝首脳会談に委ねられる点が数多くある。
これまで国際社会は、北朝鮮の核放棄を促すため圧力をかけ続けてきた。ここにおける日本の役割は大きかった。しかし今後の和平プロセスでの主なプレーヤーは、南北朝鮮、アメリカ、中国、場合によってはロシアも加わるようだが、日本はずしの懸念がある。悲願の拉致問題解決についても、スルーされる危険があり、安倍外交の真価が問われることになるだろう。歴史の歯車が大きく回転したかに見える首脳会談、その目撃者になれたことで我々もやや興奮気味だが、巧妙に演出された融和ムードに決して流されることなく、事態の推移を冷静に観察し、和平プロセスにきちんと食い込んで発言することこそ、我が国の国益を守ることになる。
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