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2018-05-10 00:00
「反故(ほご)常習国」北朝鮮は軽々に信用出来ない
杉浦 正章
政治評論家
北朝鮮の非核化問題の鼎(かなえ)が煮えたぎり始めた。6月の米朝首脳会談を見据えて北朝鮮は3人の米国人を解放。2年半ぶりの日中韓首脳会談は朝鮮半島の非核化に向けた協力で一致した。完全非核化への道筋は複雑で遠いが1歩前進ではある。極東をめぐる力の構図は緊張緩和の入り口に立ったが、北の後ろ盾としての中国と、日米同盟の対峙の構図は変わらず、融和だけが売り物の韓国文在寅外交は荒波にもまれ続けるだろう。こうした中でまずは北朝鮮の核廃棄方式としてホワイトハウスの内部に急きょ浮上しているのが「南アフリカモデル」だ。国務長官として初めて訪朝したポンペイオは3人を連れて帰国したが、米朝首脳会談の開催場所と日程が決まったことを明らかにした。日程公表はまだないが、トランプは6月初旬までに予定される米朝首脳会談の開催地については、南北軍事境界線のある「板門店ではない」と述べた。詳細については「3日以内に発表する」と語るにとどめた。トランプはこれまで、板門店のほか、シンガポールを有力候補地に挙げている。3人の帰国は米朝関係にとって大きな摩擦要因の一つが取り除かれたことになり、1歩前進ではある。しかし核心は「核・ミサイル」であり、ここは、不変のままであり、難関はこれからだ。
ここに来て金正恩の“弱み”をうかがわせる行動が見られはじめた。それは金正恩の習近平への急接近である。40日に2回の首脳会談はいかにも異常である。そこには中国を後ろ盾に据えないと心配でたまらない姿が浮かび上がる。泣きついているのだ。金正恩は習近平との大連会談で米国への要求について相談を持ちかけた。その内容は二つある。一つは米国が敵視政策をやめることが非核化の条件というもの。他の一つは「米国が段階的かつ同時並行的に非核化の措置を取ること」である。泣きつかれて悪い気のしない習近平は8日トランプとの電話会談で「北朝鮮が段階的に非核化を進めた段階で何らかの制裁解除をする必要がある」「米朝が段階的に行動し北朝鮮側の懸念を考慮した解決を望む」などと進言した。これに対し、トランプは「朝鮮半島問題では中国が重要な役割を果たす。今後連携を強化したい」と述べるにとどまった。おいそれとは乗れない提案であるが検討には値するものだろう。注目の日中韓首脳会談は、大きな関係改善への動きとなった。しかし、北の核・ミサイルをめぐっては安倍と中韓首脳との間で隔たりが見られた。日本側は「完全かつ検証可能で不可逆的な核・ミサイルの廃棄」を共同宣言に盛り込むことを主張した。しかし、中韓両国は融和ムードの妨げになるとして慎重姿勢であった。習近平は金正恩に対して「中朝両国は運命共同体であり、変わることのない唇歯(しんし)の関係」と述べている。唇歯とは一方が滅べば他方も成り立たなくなるような密接不離の関係を意味する中国のことわざだ。
こうした中でホワイトハウスではまずは北朝鮮の核廃棄方式だとして「南アフリカモデルが急浮上している」という。韓国中央日報紙は、国家安保会議(NSC)のポッティンジャー・アジア上級部長が文正仁(ムン・ジョンイン)韓国大統領統一外交安保特別補佐官らにこの構想を伝えたという。これまでホワイトハウスではボルトンNSC補佐官が主張したリビア方式が考えられていた。リビア方式は「先に措置、後に見返り」だった。その方式ではなく南アフリカ方式を選択するというのはある意味で現実的路線のようだ。南アは第一段階で、1990年に6つの完成した核装置を解体した。第二段階は、1992年に開始された弾道ミサイル計画の廃棄で、これには18か月を要した。第三段階は、生物・化学戦争計画を廃棄した。ただ、南アフリカ方式は経済的な見返りがないという点が問題となる。同紙は「南アフリカモデルを検討するというのは、北朝鮮の核放棄に対する経済支援は韓国と日本、あるいは国際機関が負担し、米国は体制の安全など安全保障カードだけを出すという考えと解釈できる」としている。結局お鉢は日本に回ってくることになるが、金額によっては乗れない話しではあるまい。同紙は「北の核は南アフリカと比較して規模が大きく、“見返りを含めた折衝型南アフリカモデル”になる可能性がある」としている。
一方、安倍は文在寅に対して「核実験場の閉鎖や大陸間ミサイルの発射中止だけで、対価を与えてはならない。北の追加的な具体的行動が必要だ」とクギを刺している。北は過去2回にわたって国際社会の援助を取り付け、その裏をかいて核兵器を開発してきており、まさに裏切りの常習犯だ。政治姿勢が左派の文在寅は、北への甘さが目立つ。圧力はまだまだ維持するべきであろう。北は、日米に取っては「反故常習犯国」なのだ。核兵器の全て廃棄という目標達成まで圧力を継続するのは当然である。
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