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2018-05-17 00:00
米朝会談へ神経戦が最高潮
杉浦 正章
政治評論家
6月12日に開催予定のトランプと金正恩の米朝首脳会談に向けて、神経戦が展開されはじめた。分析すれば米国が、「完全なる非核化」を要求し、北はこれを拒否した上で体制の保障を求めている構図が浮かび上がる。米国は北に対して核弾頭や大陸間弾道弾を半年以内に国外に搬出するよう要求、その代償としてテロ支援国家指定の解除と金正恩体制の存続をちらつかせているようだ。しかし金正恩が命と守る核兵器を半年以内に搬出する可能性はゼロに近く、米提案は駆け引き材料に過ぎまい。溝が埋まるにはほど遠い。
北朝鮮は16日、米韓空軍の定例合同訓練を理由に、南北閣僚級会談の中止を一方的に通知し、第1外務次官金桂官が談話を発表した。談話は「大統領補佐官のボルトンをはじめ、ホワイトハウスと国務省の高位官僚は『先に核放棄、後に補償』方式を触れ回りながら、リビア核放棄方式だの『完全かつ検証可能で不可逆的な非核化』だの、『ミサイルの生化学武器の完全放棄』だのという主張を厚かましく繰り返している」と米国の要求を批判。「これは対話を通じて問題を解決しようとするものではなく、本質において大国に国を丸ごと任せきりにして、崩壊したリビアやイラクの運命を尊厳高い我々に強要しようとする甚だ不純な企てだ」と強調した。さらに金桂官は「一方的に核の放棄だけを強要しようとするならば、首脳会談に応じるかどうかも再考せざるを得ない」と首脳会談再考も示唆している。
これに対しトランプは「われわれは何の知らせも受けていない。様子をみてみよう」と述べ、北朝鮮の今後の出方を見極める考えを強調した。さらにホワイトハウス報道官のサンダースは、米朝首脳会談について、「重要な会談だ」と指摘し、準備を進める考えを示す一方で「トランプ大統領は、困難な交渉には慣れていて、その準備も整っている。ただ、北朝鮮が会いたくないのなら、それでもいい。その時は、最大限の圧力をかけ続けるだけだ」とすごんで見せた。北朝鮮が対話を選ばなければ、圧力を強める考えを示して、けん制したことになる。しかし、“口撃”の厳しさは半島民族の“特性” であり、隘路を探していることは間違いない。その一つとして、韓国大統領文在寅を通じてトランプの説得を要求している可能性が高い。米韓首脳会談は22日に予定されており、北朝鮮が米韓合同航空戦闘訓練『マックスサンダー』を理由に南北閣僚級会談を一方的に中止したのは、米韓首脳会談に向けた思惑があるからにほかならない。その意図は韓国を動かして、米国との首脳会談の際の北朝鮮の立場をより正確に説明させようとしているのかもしれない。既に北朝鮮は韓国との閣僚級会談を中止することで、F22などの戦略兵器が朝鮮半島に飛来することを望んでいないという意思を明確に示している。金正恩は北朝鮮の立場をあらかじめ文在寅を通じてトランプに伝達してけん制しているのだろう。
そもそも北朝鮮の狙いは今年早々から明白だ。正月に金正恩は対話攻勢に転じて、まず米国の同盟国である韓国の取り込みを図ってきた。金正恩と文在寅の会談で準備段階を終え、いよいよトランプとの会談に向けた総仕上げ段階に入っているのだろう。北は体制の保障と平和協定締結を最終目標としている。また一連の言動は米朝会談で主張する予定の重要なメッセージを米側にあらかじめ伝えて、瀬踏みをしているのだろう。これに対して米側も半年以内の核搬出という“高値”をふっかけて、妥協点を模索しているのが現在の図式だろう。
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