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2018-05-29 00:00
米朝首脳会談の本質は対中戦略
赤峰 和彦
自営業
6月12日の米朝会談の中止が発表されましたが、米朝首脳会談はさまざまな紆余曲折があろうとも開催されるのは明らかです。アメリカのトランプ大統領は力づくでも北朝鮮の非核化を実現しようとするし、北朝鮮の金委員長にとってはアメリカから「経済制裁の解除と体制維持の保障」の確約をしてもらうことが目的だからです。しかも、両国に共通しているのは、「目障りな中国の存在」です。アメリカにとってはパクス・アメリカーナを脅かす存在であり、北朝鮮にとってはいつまでも宗主国ぶる中国が邪魔で仕方がありません。反中は共通の利益なのです。
さまざまな思惑があるなかで、アメリカは会談とその後で起きるであろうさまざまな局面を想定しています。5月16日に太平洋軍司令官のハリス海軍大将を韓国駐在大使に指名し、22日には、13隻中7隻が弾道ミサイルに対応できる最新のミサイル防衛能力を備えたイージス艦の横須賀基地への追加配備に注目すべきです。これらの意味するところは、米朝会談が決裂した場合の対北朝鮮戦略と、米朝合意がなされた場合の対韓、対中戦略の両方を考慮に入れているということです。すなわち、北朝鮮との話が上手く行かなければいつでも北朝鮮への攻撃体制に入ることを示し、米朝合意がなされれば、韓国の駐留米軍を縮小しつつ、中国への睨みを強化するシステムを構築しているということなのです。アメリカにとっての米朝会談は一つの通過点に過ぎず、その後に起きる東アジア情勢の変化を見越した上で、対中戦略を練っているのです。
中国にとっては、北朝鮮の核弾頭が北京を狙っている以上、北朝鮮の非核化を強く望んでいます。しかし同時に、中国にとっては、米朝合意がアメリカ主導の下で達成され、北朝鮮がアメリカ側につくことになることは避けなければなりません。そのため表向きは、大国としての面子を保ち賛成のポーズを示していますが、裏では北朝鮮に食料や石油の援助をチラつかせては、米朝会談の妨害を図っています。現在、米朝会談の有無が取り沙汰されはじめたのはこのためです。ただ、早急な援助が求めている北朝鮮にとっては、中国の意図を承知の上で中国に同調するそぶりを見せていますが、米朝会談が実施されれば、瞬時に手の平を返すと思われます。
アメリカが北朝鮮との対話を検討しはじめたのはトランプ政権になってからです。トランプ大統領は「民主主義や人権の尊重などを共有する国家との関係強化」という安倍総理の外交姿勢を基本的な外交基準にしています。そのためトランプ大統領は日米豪印によるインド太平洋戦略の構築を急いでいる最中です。一方、中国としては、一帯一路計画が包囲されるわけだから承服できないのは明らかです。したがって、中国は各種メディアを通じてトランプ叩きや安倍叩きをやらせて、米朝会談が不調に終るよう言論操作を画策しているのです。しかし、冒頭で述べたように米朝は共通の利益を優先させるので、米朝会談は必ず実施され、中国が最も恐れる米朝の友好関係が実現する可能性が高いと思われます。今後、国際社会の相関図は激変すると考えられます。私たちは、思惑だらけのメディアや評論に惑わされず、推移を冷静に見守っていく必要があると思います。
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