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2018-06-01 00:00
迷走する米朝首脳会談
四方 立夫
エコノミスト
米朝首脳会談が開催→中止→開催と迷走を続けている。中間選挙→大統領選挙→ノーベル賞を睨み是が非でも「歴史的快挙」を成し遂げたいトランプ大統領と、米国から「体制保障」を取り付け中国の後ろ盾を得て経済改革に邁進したい金正恩委員長の利害が、表面的には「一致」しているように見える。このままでは両氏が「朝鮮半島非核化という偉業」に合意したとされる「一大政治ショー」が展開され、国連を始め各国が「核戦争回避」を一時的にせよ歓迎することになり、既にトランプ大統領の支持率は42%余りに上昇し、早くも中国は「制裁緩和」に動き丹東では積極的な投資すら開始されている。
過去約25年間に亘り同様の合意は幾度となく達成されては破棄されており、今や北朝鮮問題の専門家すら不十分なトランプ政権が結果的に再び「いつか来た道」を歩むことになり、たとえ米国本土を射程に入れたとされる未完成のICBMの開発が「中止/破棄」されたとしても、我が国を射程に入れた短中距離核ミサイルはそのまま残り、北朝鮮の経済が「発展」するとすれば、その分我が国の安全保障環境は悪化することになる。
5月30日付の日経新聞にモゲリーニEU外交安全保障上級代表が寄稿している通り、今やEUとアジアは経済、文化、のみならず安全保障に関しても共通の利害関係を有しており、たとえ北朝鮮の核ミサイルが直接欧州に到達しなくても、その短中距離核ミサイルは中東を始めとするテロ組織乃至はその支援国家に輸出され、欧州にとっても直接の脅威である。
トランプ大統領当選以来培ってきた「シンゾー・ドナルド」の関係に加え、広くEU、オーストラリア、カナダ、等との連携を強化し、北朝鮮がCVID(Complete, Verifiable, and Irreversible Dismantlement)を遅くとも2020年までに達成し、且つこれをIAEAが検証するまでは、同国に対する一切の制裁をいささかも緩めることが無いよう、再三に亘り確認しそれを公式に発表し続けることが肝要である。70余年に亘る日米関係に加え、新たにEU、オーストラリア、カナダ、等を始めとする自由主義世界の多国間主義が真価を発揮すべき時である。
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