ホーム
新規
投稿
検索
検索
お問合わせ
本文を修正後、投稿パスワードを入力し、「確認画面を表示する」ボタンをクリックして下さい。
2018-06-18 00:00
日米同盟を基軸とした多国間主義へ
四方 立夫
エコノミスト
初の米朝会談は金正恩委員長の勝利に終わった。北朝鮮は従来の合意よりも緩やかな“denuclearization of the Korean Peninsula”の約束をしただけで、トランプ大統領より“security guarantees”を得、さらに米韓合同軍事演習の中止、並びに在韓米軍の縮小~撤退に関する発言まで引き出した。「日米韓を中心に世界が結束して北朝鮮によるCVID(Complete, Verifiable, Irreversible Dismantlement)が達成されるまで最大限の圧力を掛け続ける」はずが、肝心の米国が最も融和的な姿勢に転じたことは、トランプ政権が「中間選挙ありき」で安全保障に関する意識が低いことの現れに他ならない。直前に開催されたG7では、トランプ大統領は一旦合意した首脳宣言を、その後のトルドー首相の記者会見に激怒して反故にし、自由貿易を堅持するはずのG7の分断と共に、トランプ政権の同盟国軽視を世界に印象付けることとなった。同時期に開催された上海協力機構が反保護主義を掲げた共同宣言を発表したことと対照的である。
トランプ大統領は大型減税、エルサレムへの首都移転、イラン核合意離脱、など続々と選挙公約を実行し、史上初の米朝首脳会談によりコアな支持者に加え新たな支持者も増え支持率は上向いている。また、トランプ大統領は、民主共和両党の絶大な支持を得て就任したモラー特別検察官に対しても批判を強め、嘗て同氏を支持した共和党員もトランプ大統領の支持率上昇を見て批判に転じ、民主党には今もトランプ大統領に対する有力な対抗馬がいないことから、トランプ大統領が現在の任期を全うし、更に2期目に突入する可能性も否定できない。一方、中国がAIIBを設立し、一帯一路を推進し、その影響力を広くインド太平洋、ユーラシア、そしてアフリカ、中南米へと急速に拡大させていく中で、欧米各国のみならず中国の借款の受恵国からも強い警戒感が発せられている。我が国としては、日米同盟の強化を図る一方、従来必ずしも緊密とは言えなかったEUとの関係を強化し、カナダ、オーストラリア、等の自由主義国と密接に連携していくことが肝要である。
米国のTPP離脱後、我が国がリーダーシップを発揮してTPP11の合意に達し、更に日EU・EPAにも合意したことは日本外交の勝利である。現在TPP11にはタイ、インドネシア、英国、などが参加に意欲を示しており、メガFTAsを構築して中国の一帯一路と対峙していくことは、経済面のみならず安全保障の面においても極めて重要である。本来かかるメガFTAsの最大の受益者たりうるのは、戦後自由貿易を推進しそのルールを構築してきた米国であり、そのことは米国の経済界、農業界、等が熟知していることである。トランプ政権に対してはかかる「実利」を目に見える形で提示し、米国産品の輸入増加等により米国の貿易赤字削減に協力し、「多国間合意の方が2国間合意よりも米国にとって有利である」ことを数値をもって明示することにより、米国をメガFTAsに引き戻すことが喫緊の課題である。
中西新経団連会長は「民間経済外交の多面的展開と国際的な発信力の強化」を訴えているが、トランプ政権に対する従来の政府間の交渉に加え、民間の経済団体、産業界、農業界レベルで米国のカウンターパート並びに上下両院に対し、EU、カナダ、オーストラリア、等と協働して働き掛けることが有効である。反故にされたとは言えG7においてトランプ大統領が「シンゾーまとめてくれ」と発言し、一度は首脳宣言合意に漕ぎ着つけたことは、日本が今後米国と欧州並びにアジア太平洋諸国との「架け橋」と成り得ることを示唆したものである。今後共より一層我が国が日米同盟を基軸としながら多国間主義を推進していくことが、日本のみならず世界の平和と繁栄に寄与するものである。
投稿パスワード
本人確認のため投稿時のパスワードを入力して下さい。
パスワードをお忘れの方は
こちら
からお問い合わせください
確認画面を表示する
記事一覧へ戻る
公益財団法人
日本国際フォーラム