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2018-06-27 00:00
今こそ、新しい国際的枠組み「G11」を設立すべきだ
松井 啓
時事評論家、元外交官
「G11」といっても、現在ロシアで開催されているサッカーのワールド・カップの話ではない。国際社会に11カ国による新しい対話の枠組みを作ることを提案したい。ソ連の崩壊により東西冷戦は終焉し、フランシス・フクヤマ著『歴史の終わり』のようなユーフォリアがあったが、アメリカの一極主義(G1)は長続きせず、国際社会は多極化流動化した。2017年に登場したトランプ米大統領は「偉大なアメリカの再現」「アメリカ・ファースト」を唱え、TPPや環境保護のパリ協定、さらには国連人権理事会などからの離脱(Amexit)を表明している。他方、EUは、イギリスの離脱(Brexit)後、移民受け入れを巡る各国の利害対立を軸として結束が緩んできている。中国は急速な経済発展(GDPでは2010年に日本を抜き今では3倍)により、政治経済軍事面で大幅に発言権を強めている。習近平国家主席は憲法改正により自己の任期を無期限なものとし、その権力を集中し、「中国の夢」を掲げて、覇権拡大の動きを加速させている。また、ロシアは、プーチン大統領が本年5月の選挙で再選され、任期をこれまでの18年に加え2024年まで伸ばし、「偉大なロシア」を夢見てソ連時代の失地回復を図っている。さらに、中露両国は時には連携しつつ、既存の国際秩序の変革すら狙っている。
国際社会で最大の機関は1945年に設立された国連(加盟国193カ国)であるが、重要問題にはP5(国連安全保障理事会常任理事国(米、英、仏、露、中))の賛同が必要であるため事態に迅速に対処できずにいる。また、加盟国が51から出発して今や193まで増えているにもかかわらず、抜本的な改革はなされていない。G7(主要先進国7カ国首脳会議:仏、米、英、独、日、伊、加)は1973年のオイルショックに対処すべく発足し、その後検討課題を拡大させ、年1回サミットを開催している。さらに発展途上国を含むG20(主要国首脳会議:米、英、仏、独、日、伊、加、EU、露、中、印、ブラジル、メキシコ、南ア、オーストラリア、韓国、インドネシア、サウジアラビア、トルコ、アルゼンチン)が1999年来、定期的に会議を開催しているが、所帯が大きすぎて首脳が一堂に会することに意義があるようになっている。2006年には経済成長著しいブラジル、露、印、中、南ア(BRICS)が国際会議を開催しているが、現在は存在感が薄れてしまっている。その他、世界の政財界の要人が多数参加する「ダボス会議」があるが、これは、交流、情報収集、自己PRのスピーチコンテストのようなもので、具体的な意思決定機関とはいえない。
こうした現状を受けて、私は、主要な先進国および発展途上国の首脳が現在直面する政治的経済的問題を討議する場として新たに「G11」を設立することを提案したい。構成国はG7(伊、加の存在感は薄いが今さら外すことは説得困難)に加えて、国連P5のロシア、中国を入れ、さらにインドとオーストラリアを加え、これら11カ国の首脳によるサミットを定期的に開催し、国際社会が直面する主要問題につき一定の方向付けをする枠組みとしてはどうだろうか。これからの時代に中国とロシアを村八分とすることはあまり意味がなく、中露を一定の枠組みの中で責任ある行動をとらせることは重要である。また、「自由で開かれたインド太平洋戦略」を推進するためには地政学的にも政治力学上もこれら4カ国の参加は必須である。この枠組み形成に日本が仲介役となって一汗かくことは大きな意味がある。
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